続くクルスクの戦闘
しかしウクライナ軍は、ロシアによるクルスク州の完全奪還を否定する。大半の陣地は奪われたものの、依然として一部を制圧しており、戦闘活動を続けていると主張。ウクライナ軍のシルスキー総司令官は6月下旬、「約90平方キロの領土を支配している」と主張した。
ウクライナ軍が現在も領土を制圧しているかは不透明だが、少なくとも今回のグドコフ氏の死亡はそのような激しい戦闘が依然としてクルスク州内で続いている事実を裏付けている。クルスク州で展開するロシア軍兵士はウクライナ東部ドネツク州から転戦した部隊も含まれているとされ、事実であればクルスク州への進軍でロシア軍によるウクライナ領土への進軍を抑制しようとするウクライナ側の狙いは効果を発揮していることになる。
そのような事態に、数々の〝戦果〟で政権に評価されてきたグドコフ氏の部隊が、焦りを感じていた可能性も否定できない。
ロシア軍の苦境
優勢と伝えられるロシア軍だが、実態は厳しい状況に追い込まれている。ウクライナに対し圧倒的な戦力を有しているにもかかわらず、戦争開始から3年以上がたっても占領地の拡大は限定的だ。
損失を顧みない物量に頼った戦略を続けており兵士や軍装備の喪失は異常ともいえるレベルだ。戦争開始以降、約100万人の兵士が死傷したと分析されていて、軍装備も不足から民生品を流用しながら戦争を続けているのが実態だ。
北朝鮮からは、さらに数万人規模の兵士を新たに派遣する計画があるとも報じられている。北朝鮮に対してはショイグ安全保障会議書記やラブロフ外相などロシアの政権幹部らが繰り返し訪問してクルスク州をめぐる軍事協力について協議を重ねている。それ自体ロシア軍が自らの力では戦争継続能力がない事実を浮かび上がらせている。グドコフ氏のような最高幹部が前線に出ていた背景には、そこまでしなければ軍の士気を上げられない実情が垣間見える。
