2025年12月6日(土)

勝負の分かれ目

2025年8月1日

 千葉市は球場立て替えに際し、屋根の固定式や開閉式のドーム型も検討したが最終的に見送られた。原因の一つが、建設資材の高騰によるコスト面だった。

 報じられている概算事業費650億円。これは、23年に北海道・北広島市に開業した日本ハムの新本拠地で、開閉式ドームを備えた野球専用スタジアム「エスコンフィールドHOKKAIDO」の総工費600億円を上回る。

 日経新聞の記事では「選択肢の一つだったドーム型をつくるには800億〜1000億円のイニシャルコストが必要で、維持費もよりかかると試算された」とし、千葉市の神谷俊一市長も「投資回収の可能性、経営の持続性の面で屋外型に優位性がある」と述べたという。合わせて、屋外型なら球場が海に近く潮風を感じられる特色も引き継げる。

 ただ、マツダスタジアム(広島市)の設計を手がけるなど、スタジアム・アリーナに詳しい日本女子体育大学の上林功教授は「夏の猛暑対策という観点でいえば、理想はドームなどの屋内化」との見解を示す。

 ドームであれば空調や換気設備を整えることで、猛暑の影響を緩和できる。興行面においても、ドームはどのイベントも天候に左右されることなく開催できるため、多目的に使用の幅を広げることができる。

 一方で、デメリットはコスト面だ。屋根部分の建設費が上積みされるだけではなく、上林氏によれば、ドーム球場は屋外型に比べて、24時間換気や防災関連設備の基準が厳しく、維持費も高くなる。また、イベント用途の拡大についても、「ロッテの新球場がドーム化した場合、ほぼ1年を通じて野球や他のイベントで埋まらないと収支が合わないだろう。首都圏には、東京ドームやさいたまスーパーアリーナがあり、32年には東京・築地に5万人を収容できる全天候型の多機能スタジアムも誕生する。競合施設も多い中で、大規模イベントの食い合いなるかもしれない」と話す。

選手にとって辛い猛暑でのプレー

 猛暑は、選手のパフォーマンスにも影響するというデータもある。

 Jリーグ公式サイトの19年5月30日付記事「暑さはパフォーマンスに影響を及ぼすか?気温・湿度と走行距離・スプリント回数の因果関係を調査」では、温度・湿度別に、チーム別の1試合平均走行距離とスプリント回数(※トラッキングデータが導入された15年以降の統計、データ提供:データスタジアム)から、「気温が高かれば高いほど走行距離とスプリント回数は減少し、湿度においてもおおむね同様の傾向」となっていることを示し、湿度によって状況に変化があるものの、気温が10度以下の試合と30度以上の試合では1試合平均で約9キロの差が生じていることを紹介している。

 プロ野球でも、屋外型スタジアムを本拠地とする広島の夏場の失速と厳しい暑さの関連を指摘する声が挙がる。


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