コンテンツ課金はメディアの救世主となるか
NYタイムズ電子版がコンテンツ課金に成功したことで、米国では日刊紙を中心に、課金制へ移行するメディアが増えている。その流れを後押ししているのが、北米を中心に541のメディアに対し、「Press+」という名の課金機能を提供するJournalism Online(以下、JO)だ。WSJ在籍時代に10年間課金に取り組んだ経験を生かし、2009年にJOを立ち上げたGordon Crovitz氏に、そのビジネスモデルを聞いた。
「Press+は完全レベニューシェアで、メディアがリスクを取らなくて済む仕組みになっています。課金で得た収入のうち2割をJOに納めてもらいますが、ランニングコストや初期費用は一切かかりません。課金方式にはメーター制のほか、紙とデジタルのセット販売やコンテンツの部分課金など、8種類のメニューを用意しています。また、読者の傾向を分析できるデータもメディア側に提供しています」
JOは提携先の企業を招いたカンファレンスを年に4回開き、ビッグデータから読み解いた課金の成功要因を発表するなど、メディアが収益性を高めるための情報共有も行っている。
「昨年、米大手新聞グループのMcClatchy社が、Press+を使い紙とデジタルのセット販売などを行ったことで、2013年の販売収入が2500万ドル(約25億円)の純増につながるとの見通しを公表しました。これをきっかけに問い合わせが急増し、昨年末には、韓国の新聞協会がツアーを組んで視察に訪れました。日本でも、多くのメディアがまだ課金システムを導入していないので、私たちはそこに大きなマーケットがあると考えています」(Gordon Crovitz氏)
このように、米国のメディアはコンテンツ課金による収益確保に大きな可能性を見出し始めているが、前出の津山恵子氏もJesse Holcomb氏も、紙の広告収益の落ち込みスピードを考えると、「コンテンツ課金だけでは限界がある」と口を揃える。