2025年12月6日(土)

オトナの教養 週末の一冊

2025年8月21日

 社会に出れば、それを自分でやらなくてはならない。だから中高生のうちから目的に合わせて学び方を選ぶ経験が重要だ。もし選べないなら、まずは学び方そのものを学ぶ。

 その意識が定着すれば、子どもは大きく変わる。AIもまた、結果を出すためだけでなく、自分の力を伸ばすために使うという発想になってくる。

学校も、社会も、指示待ちでは幸せになれない

「何をすべきか、誰かが教えてくれる」という前提で育った子どもは、大人になっても〈指示待ち〉になりがちだ。

「ある新聞社で3カ月間は自由に取材していいって言ったのに、『何を取材すればいいかわかりません』と言ってきた新入社員の話を聞いたことがあります。そういう人は、仕事がうまくいかないと、上司のせいにしてしまう。そうじゃなくて、〈自分で選んだ〉という感覚があると、失敗しても成長に変えられるんです」

 教育も、社会も、目指すのは〈自己決定の積み重ね〉だと山本先生は語る。

「自己決定の回数と幸福度は比例するという研究もあります。だからこそ、子どもにも大人にも、たくさんの選択と、それを許容する環境が必要なんです。だから先生や親の言うことを聞いたから自分は偏差値上がった、と思っている子は、実は幸福度が高くないかもしれません。

 つまり、誰かに教わったから自分の能力は上がった、という概念が身についてしまうと、何か新しいことに挑戦するときも誰かに教わりたい、となってしまうんです。日本には予備校や塾、検定取得のための講座など、失敗しないためのプロセスが整った仕組みが文化として根づいています。

 その結果、〈何かを始めるにはまず習わなければならない〉という発想が当たり前になり、逆に自立を奪ってしまう面もあると思っています。言い換えれば、日本は『教わる文化』『失敗を嫌がる文化』なのかもしれません」


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