ジャングリアが沖縄に与えるもの
ジャングリア沖縄は単なる観光施設にとどまらない。地方創生、持続可能な観光開発、そして雇用創出を目的として設立されたプロジェクトである。
沖縄観光では、滞在日数の少なさと、一人当たりの消費額が少ないこと、地域へお金が落ちにくい仕組みが「ざる経済」と呼ばれ、大きな課題の1つになっていた。例えばハワイと沖縄の観光客の層は似ているとされるのだが、平均滞在日数は沖縄が4〜5日間(2018年調査で3.59泊)に対し、ハワイは8〜9日間(22年調査で9.27日)だった。
ジャングリア沖縄は総事業費約700億円という大規模投資で開業し、年間入場者数100万~200万人を推定している。これは日本のテーマパークの中でも一定規模を持つ施設である。
テーマパークは世界的に見ても、「当たり外れが非常に大きいリスク事業」である一方、 適切な立地・投資規模・IP(知的財産)の活用・運営マネジメントを組み合わせれば、地域経済に極めて大きな波及効果を生み出しうる事業とみなされている。
初期投資・固定費が大きいのが特徴で、投資規模は数千億から1兆円規模にのぼることも珍しくなく、初期投資の回収には長期間を要するため、需要予測を誤れば巨額の損失につながる。実際、香港ディズニーランドや中国各地の地方型パークでは入場者数が伸び悩み、赤字や経営破綻に陥った事例も少なくない。景気変動やパンデミック、国際情勢の影響を受けやすいといった他の観光事業と同様の懸念もある。
一方で、成功した場合の経済的インパクトは非常に大きいと考えられており、特にディズニーやUSJのように強力なブランドやIP(知的財産)を持ち、国際空港や人口密集地に近い立地を確保し、さらにホテルや商業施設などと一体で開発することで、滞在時間と消費額を大幅に引き上げることが可能と言われている。
観光客の誘致、宿泊や飲食など地域経済への波及効果、雇用創出、さらには都市ブランド化といった外部性を伴うため、公共部門が積極的に関与するケースも多く見られる。米国フロリダ州オーランドがテーマパークを核として観光都市へと成長した事例は、その典型で、近年では「単なる遊園地」ではなく、教育・自然・地域文化と融合した体験型施設としての性格を強めており、体験経済の中心的存在と位置づけられつつある。
すでにジャングリア沖縄は、若者が地元で働く機会を得て、東京など大都市へ出ることなく、希望を持って働ける場所を与えている。首都圏に出ていた若者がジャングリア沖縄のために戻ってきたという話も聞いた。
さらに、大学との連携による観光人材育成にも取り組んでおり、将来にわたる地域の人材基盤強化にも貢献する可能性がある。運営主体であるジャパンエンターテイメントは「沖縄から日本の未来をつくる」というミッションを掲げ、地域経済や観光産業、雇用創出を目指すプロジェクト体制を構築している。
