「ずっと募集をし続けているが人材確保が難しい。日中の外来や手術の補助など、大学病院からの派遣医師に頼らないと回らない」
そう語るのは星総合病院(福島県郡山市)病院長の渡辺直彦氏。同院はJR郡山駅からほど近い、急性期から回復期、慢性期まで切れ目のない医療を提供する地域の中核病院だ。敷地内にはリハビリ・保育施設や、看護専門学校もある。
こうした、立地がよく設備の整った病院でも、地方では十分な医師数が確保できていない。
「高齢化が進む地域では、多疾患を抱える患者が増え、診療の負担は増す一方だ。特に救急医療の現場では、医師だけでなく夜勤に入れる看護師も減少しており、持続可能な体制とは言い難い」(渡辺氏)
福島県の医師数は人口10万人あたり218.7人で、全国平均(262.1人)を大きく下回る42位に位置し、全体として厳しい状況だ。
こうした医師不足に対処するため、福島県では県と福島県立医科大学が連携し、2014年に地域医療支援センターを設置。医師が不足している県内の医療機関へ、同大学からの医師の派遣をサポートしている。派遣要請を同センターで一手に引き受けることで、対応率84%という高水準を維持しているものの、「県内ニーズの100%に応えるのは現実的には困難だ」と同センター長で福島県立医科大学地域医療担当理事の河野浩二氏は実情を語る。
「優先順位付けを行わなければならないが、ニーズや切迫感も千差万別だ。場合によっては個別の聞き取りによって、事情を細やかに把握するようにしている」と続ける。
こうした窮状とは裏腹に、医師の総数は全国的には増加している。厚生労働省によれば、00年から20年にかけて医師数は約1.3倍に増えた。だが、地方の現場では、「医師が足りない」という声が絶えない。
背景にあるのは〝医師の偏在〟だ。これを根本的に解消しなければ、地方における派遣頼みの不安定な構造は変わらない。
