2025年12月5日(金)

戦災樹木を巡る旅

2025年9月11日

 終戦記念日をピークに、波が引くように減じる戦争特集。だが、その日は「戦後80年」のスタートラインに立ったに過ぎない。慌ただしい日常に再びかき消されてゆくが、そんな日常の片隅で、静かに過去を伝え続けているのが戦災樹木だ。一過的な感情で終わらせないため、適切な保全につなげるため、科学の目で戦災樹木を捉え直す研究者がいる。

これまでの記事
第1回:【戦後80年】知っていますか? 「戦災樹木」 無口な語り部が私たちに訴えること
第2回:多くの爆弾が降り注いだ「戦災樹木」、東京都内だけでも200本以上…調査で分かった3つの特徴
第3回:山の手空襲から奇跡の再生 「樹齢750年の大銀杏」 米国ゆかりの「善福寺」で見た戦争の爪痕
戦災樹木として知られる飛木稲荷神社(東京都・墨田区)の御神木(提供:根岸尚代氏) 

 「これ、空襲の傷跡なんです。80年前の……」。取材で戦災樹木を撮影していると、道行く人も気になるようで、不思議な顔をされる。説明の看板も何もないことが大半なので、足を止めてくれた人には、勇気を出して声をかけてみる。すると、大概の人は、まじまじと木を見つめながら「すごい生命力ですね」と驚嘆を口にする。

 傷を負いながらも毅然と立ち続ける戦災樹木。その姿に畏敬の念を抱くのは、見る人の主観に過ぎない。一過的な感情の高ぶりで終わってしまうこともある。だが、そもそも普段の生活で、一本一本の樹木に注目している人が、どれほどいるだろうか。


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