2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年9月6日

 大阪・関西万博があと1カ月ほどで幕を閉じる。パビリオンの建設や予約チケットの売れ行き、鉄道運休による帰宅困難といった様々な問題が開幕前後で起きていたが、入場券の販売が黒字の見通しとなっている。

 この一大イベントをこれから来場しようと思う人もいるだろう。万博とは何なのか、どんな意義があり、効果が起こり得るのか――。今から参加する人、また訪れようとする人も今一度知っておきたい。

 万博の歴史や経済効果、今起きている課題を指摘した記事を紹介する。

(アフロ )

<目次>

・どうなる大屋根リング?どうなる暑さ対策?来場者の満足度が高い大阪・関西万博、もっとコンテンツの魅力を支える運営を(2025/07/15

・門外不出の「モナ・リザの微笑」がもたらした文化外交の力、日本は万博というメガイベントで何を訴えるべきか?(2025/07/02

・〈地方観光のヒントが詰まった大阪・関西万博〉各国パビリオンから見える7つの国際潮流、現場を見てわかったこと(2025/04/28

・サウジアラビアが大阪・関西万博で大規模出展している理由、脱却したいオイル依存経済、急ぐ自国産業の魅力発信(2025/05/09

・「開幕に間に合わない」と言われた万博のパビリオンはなぜ間に合ったのか?知られざる建設業界の底力

どうなる大屋根リング?どうなる暑さ対策?来場者の満足度が高い大阪・関西万博、もっとコンテンツの魅力を支える運営を

大阪・関西万博の来場者数は順調だが、運営側の対応に課題が出ている(筆者撮影、以下同)

 日本政府の主催事業にもかかわらず、「大阪のローカルイベント」と揶揄する声が収まらない大阪・関西万博は、7月13日で開幕から3カ月となり、半年の会期の折り返しを迎えた。会場では、万博のコンセプト「未来社会の実験場」はあまり感じられないのが正直なところだが、大阪人のお祭り好きの性もあってか、来場者数は連日10万人を超えている。

 しかし、あまりの混雑に来場者から不満の声が目立ち、会場での害虫の大量発生やレジオネラ属菌検出などの問題も噴出。万博の運営主体・日本国際博覧会協会(万博協会)の場当たり的な対応に厳しい目が向けられている。

 大阪市の人工島・夢洲の万博会場では6月29日、来場者1000万人の達成を記念する式典が開かれた。万博協会は運営スタッフや報道関係者らを含めた累計で達したとしており、このうち一般来場者は800万人台となっている……

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門外不出の「モナ・リザの微笑」がもたらした文化外交の力、日本は万博というメガイベントで何を訴えるべきか?

アメリカでのモナ・リザ展示は文化外交の最たるものと言える(ロバート・リロイ・クヌースン, Public domain, ウィキメディア・コモンズ経由で)

 大阪・関西万博真っ盛りだ。まずは来場者の目標達成を祈念するばかりであるが、テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」、コンセプトは「未来社会の実験場(People's Living Lab)」だ。

 そもそも万博は19世紀半ばフランスの内覧会が英国ロンドンで国際化し、その後フランス・アメリカを中心に開催が繰り返され、その後世界へと拡大、今日に至っている。当初の内覧会は産業革命真っ盛りの折、最新の産業技術の展示や情報交換の場としてスタートした。その意味では「近未来の体験」だった。

 蒸気機関動力、ミシン、エレベーターなど、日常生活の自動化のための発明は便利な「近未来」の体験だった。その意味では今回の大阪万博のテーマとコンセプトは素直な原点回帰の意味を持っているように思われる……

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〈地方観光のヒントが詰まった大阪・関西万博〉各国パビリオンから見える7つの国際潮流、現場を見てわかったこと

(田中庸介/アフロ)

 2025年の大阪・関西万博に関して、前回「過去の万博から学べ!大阪・関西万博を経済活性化とインバウンドの起爆剤にするために必要なこと」は筆者が訪問する前にマクロな視点からその意義を記述した。今回開幕から10日後に実際に万博を訪問してみて、実に興味深いイベントであると体感した。

 個人的には素直に楽しめるイベントだったのだが、自治体、観光地域づくり法人(DMO)、観光ビューロー等にとっては、自らの地域資源を世界にどう魅せていくかを学ぶ絶好の機会でもあると感じた。特に、各国のパビリオンはそれぞれの文化・価値観・観光資源を凝縮して表現しており、地方観光戦略に参考となる視点が満載である。まずはいくつか個別のパビリオンから学べる点を確認しよう。

 トルコパビリオンは、「文明の黄金時代(Heyday of Civilizations)」をテーマに、アナトリアの豊かな歴史と文化を多面的に表現している。トルコと日本の国旗に共通する「太陽と月」の象徴を通じて、昼と夜、過去と未来、自然と人間の調和を象徴的に描き出し、外観には地中海と黒海の波を模した縦型のデザインが取り入れられており、トルコの地理的多様性と文化的深みを可視化している……

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サウジアラビアが大阪・関西万博で大規模出展している理由、脱却したいオイル依存経済、急ぐ自国産業の魅力発信

日本館に次ぐ広さを誇るサウジアラビア館(新華社/アフロ)

 大阪・関西万博で、サウジアラビアの存在感が際立っている。サウジアラビアのパビリオンは日本館に次ぐ2番目の広さを誇り、豊かな歴史や活気あふれる現在、そして有望な未来を提供している。

 なぜ、万博のパビリオンにここまで力を入れているのか? サウジアラビアは2016年発表の経済改革計画「ビジョン2030」に沿って、過度な石油依存の経済からの脱却を図っている。30年にリヤド万博、34年に男子サッカーW杯(ワールドカップ)を控えており、大阪・関西万博を通じた自国の魅力発信は重要な意味を持つ。

 サウジアラビアの石油埋蔵量は20年末時点でベネズエラに次ぐ、世界第2位の推定2975億バレル(世界シェア17%、可採年数〈R/P〉は73.6年)(出所:Energy Institute)。石油生産量や輸出量は常に世界トップ3に入る。サウジアラビアの石油政策は世界の石油供給と国際原油価格に大きな影響を及ぼしている……

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「開幕に間に合わない」と言われた万博のパビリオンはなぜ間に合ったのか?知られざる建設業界の底力

世界的にも評価の高い万博会場の「リング」。日本の建設業界の力を見せつけてた(VCG/アフロ)

 4月13日に大阪湾の人工島、夢洲(大阪市此花区)で開幕した大阪・関西万博は、悪天候や混雑対応などで混乱はみられたものの、約1週間で50万人が来場するなど堅調なスタートを切っている。来場者に驚きを与えているのが、非日常を感じさせる独特な形状の国内外のパビリオンの数々や、大阪湾を一望できる大屋根リングだ。5つの海外館が開幕に間に合わない事態は発生したが、大半は開館にこぎつけた。

 直前のドバイ万博の遅れや資材価格の高騰、軟弱地盤で、工事中の大半の期間で電気、水道すらなかった夢洲という立地など、会場建設は困難を極めたのが実態だ。ただ、それでも間に合わせることができたのは、建設業界の工夫と努力があったからに他ならない。万博の評価の高まりの〝陰の立役者〟だといえる。

 「非常に困難な工事だったと聞いており、完成はとてもうれしい。パビリオンは、日本とチェコの特別なつながりを示している」……

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