2025年12月5日(金)

Wedge REPORT

2025年10月11日

 パレスチナ・ガザ地区でイスラム組織ハマスらがイスラエル南部を襲撃してから2年を迎えた。米政府による和平案の第一弾をイスラエルとハマスが合意した。ハマスは人質を解放し、イスラエルは合意ラインまで軍を撤退させるとしている。

(TexBr/gettyimages)

 停戦へ前進を遂げたものの、これまで2度の停戦が短期間で終わっている。今回が恒久的なものになるのかは不透明だ。

 そもそも両者はなぜ、対立しているのか? 「ハマス」というのはどういった組織なのか? トランプ政権が「イスラエル寄り」とされる理由はあるのか? 欧州の立場はどのようなものか? ガザでの戦闘を振り返る記事を紹介する。

〈目次〉

ガザのハマスとは何者なのか?イスラエルに敵対する組織の実態(2021/05/16)

パレスチナ情勢でカタールがなぜ仲介者なのか イスラム勢力を支援する〝小国の知恵〟(2023/11/06)

【解説】米国でイスラエル・ロビーはなぜ強いか?(2023/10/24)

〈敵国による殲滅を防ぐ〉イスラエルが持つ「核のホロコースト」への危機感、伝統政策「ベギン・ドクトリン」とは何か?(2025/06/20)

軍の反対、人質を無視し「ガザ制圧」に乗り出すネタニヤフ、焦りを生んだ大きな“誤算”…何のための侵攻拡大なのか(2025/08/20)

〈目次〉

ガザのハマスとは何者なのか?イスラエルに敵対する組織の実態

イスラエルに向けてガザ地区からロケット弾を発射するハマス

 イスラエル軍とパレスチナ自治区ガザのイスラム原理主義組織ハマスとの交戦は5月15日も続行、パレスチナ側約130人、イスラエル側8人の死者が出た。ハマスは2300発を超えるロケット弾を発射、イスラエル軍は空爆と地上部隊の砲撃を激化させた。中東最強のイスラエル軍に挑むハマスとはどんな組織なのか、その実態をクローズアップした。

 ハマスは「イスラム抵抗運動」の意。源流はエジプトのイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」で、1987年12月にアハメド・ヤシンがガザ地区で創設した。その最終目標は「イスラム原理主義国家」の樹立であり、イラク、シリアを席巻したあの「イスラム国」(IS)と目指すところは基本的には同じだ。

 ハマスはイスラエルの生存権を認めていないし、武装闘争の旗も降ろしていない。このため米国はハマスをテロ組織に指定している。パレスチナの現状を規定することとなった93年のオスロ合意により、ヨルダン川西岸と地中海沿いのガザ地区がパレスチナ自治区となった。イスラエルは当初、ガザ地区に駐留していたが、その後撤退。ガザ地区とイスラエルの境界にフェンスをめぐらし遮断した……

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パレスチナ情勢でカタールがなぜ仲介者なのか イスラム勢力を支援する〝小国の知恵〟

軍事衝突後の10月15日に、ハマスの指導者、イスマイル・ハニヤ氏(右)とイランのアブドラヒアン外相の会談がカタールの首都ドーハで行われた(提供:Iran's Foreign Ministry/WANA/ロイター/アフロ)

 パレスチナ自治区ガザ情勢はイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの本格的な市街戦が切迫する中、ハマスに拉致された人質約240人の安否が一段と懸念される事態になった。人質解放交渉はペルシャ湾のカタールを舞台に行われているが、先行きは予断を許さない。同国はなぜ人質解放の仲介者となっているのか、〝小国の知恵〟とその背景を探った。

 人質解放交渉がカタールの首都ドーハで行われているのは何よりも同国がハマスに影響力を持ち、同組織の政治指導者の滞在や事務所開設を容認しているからに他ならない。米紙などによると、ドーハには米国のリーフ国務次官補(近東担当)ら米代表団や情報機関モサドなどイスラエル代表団が入り、カタール当局者がハマス指導部との間をつないで間接的に交渉を続けている。

 ハマス側は現在、「5日間の停戦」と引き換えに人質の解放を提案しているようだが、イスラエル側は応じていない。ネタニヤフ首相は「すべての人質が解放されない限り、停戦はない」と表明しており、「人道休戦」を求めるブリンケン米国務長官の働き掛けを拒否、交渉が難航するのは必至だ……

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【解説】米国でイスラエル・ロビーはなぜ強いか?

バイデン大統領は、ハマスとイスラエルの衝突から間もなく、イスラエルを訪問し、連帯を強調した(ロイター/アフロ)

 パレスチナ自治区のガザを実効支配するイスラム組織ハマスとイスラエルとの交戦が激化する中、米国のジョー・バイデン大統領は10月18日にイスラエルを訪問し、イスラエルとの連帯を強調した。また、19日にテレビ演説で、イスラエルやウクライナに対する「前例のない支援策」を発表した。さらに米国は21日に国連安全保障理事会の各理事国に対し、ハマスを非難し、イランを牽制するとともに、イスラエルに自衛権があることを再確認する決議案を提示したと伝えられている。

 バイデン政権によるイスラエル支援の方針には、連邦議会でも超党派的な支持がある。上述の支援策はウクライナ支援を含むために議論が分かれるが、イスラエルへの支援に限るならば、超党派的に承認されるだろう。

 イスラエル寄りの方針が支持される背景に、米国とイスラエルが長年にわたり同盟関係にあることがあるのは当然だろう。だが、それだけで米国の政治家の強固なイスラエル寄りの姿勢を説明するのは困難である……

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〈敵国による殲滅を防ぐ〉イスラエルが持つ「核のホロコースト」への危機感、伝統政策「ベギン・ドクトリン」とは何か?

イスラエルによる空爆を受けたイラン(Majid Saeedi/gettyimages)

 イスラエルが長年にわたり、安全保障上の最大の脅威と見なしてきたのは、イランの核開発計画だった。今回イスラエルがイラン攻撃に踏み切った背景には、敵国の核兵器保有を許さないイスラエルの伝統的な政策「ベギン・ドクトリン」がある。

 6月13日に、イスラエルがイランの核施設や弾道ミサイルの発射基地などに対して攻撃を開始した。これまで11回イスラエルを訪れた筆者は、「来るべきものが来た」と思った。イスラエルがイランの核施設を攻撃するのは時間の問題だと思っていた。

 2024年10月にイランが初めてイスラエルに向けて約200発の弾道ミサイルを発射した。テルアビブ郊外に住む筆者の知人(イスラエル人)は、家族とともに45分間シェルターに避難した。彼は「イランの核開発プログラムが除去されることが最も重要だ。狂信的なイスラム国家が、北朝鮮のような核保有国になることは、イスラエルだけではなく世界にとって脅威だ」と語った…… 

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軍の反対、人質を無視し「ガザ制圧」に乗り出すネタニヤフ、焦りを生んだ大きな“誤算”…何のための侵攻拡大なのか

ガザ軍事作戦の正当性を主張するイスラエルのネタニヤフ首相(ロイター/アフロ)

 イスラエルのネタニヤフ政権はパレスチナ自治区ガザの中心都市、北部ガザ市の制圧計画を閣議で承認、同市の完全支配に乗り出した。だが、イスラム組織ハマスは事実上壊滅状態で、何のための侵攻拡大か判然としない。

 人質の命を危険にさらし、住民の犠牲者を増やす結果になる恐れが強い。「戦争の長期化を正当化しただけ」との批判の中で、ネタニヤフ首相は何を狙っているのか。

 イスラエル軍は一昨年の開戦当初、ガザ市からハマスを一掃し、ガザを南北に分断、北部についてはほぼ平定したはずだった。ところが、軍が南部への攻撃に焦点を移し、北部への圧力を弱めると、ハマスの戦闘員はガザ市のトンネル網から再び姿を現し、イスラエル軍を悩まし続けた……

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