急増する電力需要
ゲームのクラウド化が進む中で、高精細で臨場感あふれるゲーム体験を実現するには、通信網やデータセンターといった基盤インフラの整備が一層重要となる。それらを支える電子機器の安定稼働には、持続的で安定した電力供給が不可欠である。
一方、サウジアラビアは他の中東諸国と同様に、急増する電力需要への対応という課題を抱えている。同国の発電量は04年から24年の間に173テラワット時(TWh)から454TWhへと大幅に増加し(図1)、この10年間の年間平均増加率は5.6%に達した。
需要増加の背景には、人口増加や経済成長、度重なる熱波による冷房需要の拡大、さらには海水淡水化施設のフル稼働がある。今後は、拡大が見込まれるeスポーツ産業に加え、人工知能(AI)産業の成長やそれに伴うデータセンターの増設が電力需要を一段と押し上げると予測される。
AI政策については、19年にサウジ・データ・AI庁(SDAIA)が創設され、20年に「データ・AI国家戦略(NSDAI)」が発表された。同戦略では、30年までに2万人のAI人材を育成するほか、教育、医療、エネルギー、モビリティ、政府の5分野を優先領域としてデータ・AI技術を導入することを掲げている。
さらに、政府のデジタル資産の30%にあたる80件以上の政府データセットを収録した「国家データバンク」を設立し、また40を超える政府機関が保有する83のデータセンターを統合することで地域最大級のガバメントクラウドの形成を目指している。
世界各国のデータセンター情報を提供する「Data Center Map」によれば、サウジアラビアには現在、中東最多となる51のデータセンターが稼働している。今後はAI戦略の進展に伴い、ギガワット級の容量を備えたデータセンターの新設も見込まれている。
電力部門の脱炭素化へ
発電所の新設が急務となる中、サウジアラビアは発電用燃料の大半を化石燃料に依存していることから、電力部門における脱炭素化への取り組みが求められている。このため、温室効果ガスの主因である二酸化炭素(CO₂)を排出しない太陽光や風力といった再生可能エネルギーに活路を求めている。

