それに、不足感が解消されたのならば、「なぜ価格が下がらない」のだろうか。やはり、コメは「不足しているから高止まり」なのではないか。
価格は誰が決めるのか
適正な価格についての質問に対し鈴木農水大臣は「何円台がいいとは言わない。価格はマーケットの中で決まるべきものだ」とした。
その通りである。ただ、その際は、マーケットが「公開・公正で」「機能が十分に発揮されており」「行政がそれを側面から支援している」ことなどが必要である。
米産業懇話会の研究でも、たとえば、芝浦の食肉市場は、公開・公正で、全国の指標の役割を果たしている。場合によれば、コメも中央市場に上場することも考えられるという意見があった。
市場では、現在の価格、将来の価格が示されないとリスクはヘッジできない。ましてや安定的な取引関係には、播種(はしゅ)前・複数年取引が推奨されるのだから、将来価格の保証は大事な機能である。
産物の価格形成について、一歩踏み込み、「生産コストだけではなく、他産業との競争となる従業員確保や安定的な再生産に向けた『対価』が必要」との点については異論が無い。しかし、コストの全てを価格に転嫁すれば、(関税を加えた)コメの民間輸入や他の穀物食品(パン、麺、パスタなど)に消費がシフトして、米生産を減らすことにつながりかねない。過去の経験に学ばなくてはならない。
コメ(精米)の調達価格は、関税込みでたぶん500~600円/キログラム(kg)、玄米価格では3万円/60kg(日本農業新聞)だから、高い生産者価格(概算金水準)にこだわると輸入米が有利になる。生産コストを最終的には消費者が負担する価格支持だけでカバーするのでよいのかどうか、ここは思案のしどころだ。
世界の農政潮流は、所得補償に向かっているし、基本計画策定当時の消費者団体の見解も「コメ生産の持続のために所得補償をすることには肯定的であった」と認識している。なによりも、改正された「食料・農業・農村基本法」でも、「価格は市場で、所得は経営政策で」との路線は変わっていないはずである。
