2025年12月14日(日)

古希バックパッカー海外放浪記

2025年11月9日

エルドアン大統領を支持するのはどのような人々なのだろうか

イーサーベイ・モスクの中庭。日本では仏教寺院の住職が政治を語るこ とは稀有であるがイスラム教の宗教指導者は率直に政治を語る。日本の仏教は来世での 安寧を説くがイスラム教では現世での生活規範を守り理想社会を実現することを目標に しているので政治へのスタンスが異なるのだろうか

【宗教指導者】

 8月6日。エフェス遺跡の近くのイーサーベイ・モスクは、1375年創建の荘厳な建物であり観光名所となっている。朝一番で参観すると観光客はおらずモスクの責任者であり宗教指導者であるイマムが1人で祈っていた。

 礼拝が終わったイマムのイブラヒムにイスラム教についていくつか質問して歓談した。イブラヒムは日本語訳のコーランを筆者に渡してイスラムへの理解を深めるように諭した。

 イブラヒムによると、イスラム世界は米国と欧州からの経済支配や政治的干渉を排して経済的にも政治的にも精神的にも独立することで、コーランが示す理想のイスラム世界が実現できると力説した。欧米は中東のテロリストを支援してイスラム世界を不安定にしてきた。石油を初め貴重な中東の資源を収奪してきたと非難。そして欧米に対してイスラム世界の正義を堂々と主張するエルドアン大統領を断固として支持すると結んだ。

 筆者は80日間のトルコ滞在中の3分の2以上はモスクの敷地にテントを張るか、またはモスクの中で寝かせてもらった。それゆえ各地のモスクのイマムと親しくなったが、ほぼ全員がエルドアン大統領には肯定的であった。

【カフェのオーナー】

 8月8日。クシャダス中心地の裏通りのカフェの50代半ばのオーナー。昨今のインフレと物価高は困った問題であるが、総じてエルドアンの23年の統治に満足している。力強いリーダーシップで国家を運営しており敬虔なイスラム教として人間的にも信頼できると評価。

【モスクの信者仲間の男性グループ】

 8月11日昼前。Didimの町なかの小さなモスクの木陰で40代から60代の男性が6~7人喫煙しながらお喋りしていた。彼らは夏休みの期間中にとモスクで開かれるコーラン教室に参加している自分の子供や孫を迎えに来たのだ。

 彼らはお互いに古くからの知り合いのようであり、日常的にモスクでの礼拝に参集している信者仲間であった。シリアでマロン派キリスト教徒がイスラエルの支援を受けて武力蜂起したことに対して、エルドアンがトルコ軍を派遣して、シリアのイスラム原理主義政権を支援したというニュースに興奮していた。エルドアンの決断を賞賛してトルコ軍の活躍に欣喜雀躍であった。彼らは全員がエルドアン支持者だった。

【退役軍人の夜警】

 8月17日。マルマリスのパブリック・ビーチのマリンスポーツ・センターの傍らで野営。明け方に目が覚めてテントから出ると、夜警(night watchman)のオジサンがジェンギスと名乗ってから、トルコ紅茶をふるまってくれた。ジェンギスはエルドアン大統領の熱烈な支持者であった。

 ジェンギスは、現在52歳で過去20年間陸軍に勤務して除隊してから故郷のカッパドキアで家業を手伝っていた。妻とは離婚したが、一人息子が陸軍士官学校を卒業して、攻撃ヘリのパイロットをしていることを誇りにしている。軍人年金を補うためにカッパドキアからマルマリスに出稼ぎに来たという。

 ジェンギスは、自分の名前はモンゴルの英雄ジンギスカンに由来していると説明した。中央アジアの草原の民がルーツであるトルコ人はジンギスカンを尊敬しているという。ジェンギスはラキア(アルコール度の高いトルコ伝統の蒸留酒)や、ビールが好きであるがモスレムとしての矜持が自分のバックボーンであると強調した。

【元ビジネスマンの年金生活者】

 8月29日。カルカンの幹線道路脇の展望スペースの駐車場で遭遇したカップル。ジャン62歳は建築資材の仕事を引退した年金生活者。ニルギュンはいわゆる地域保健所の健康保健衛生のディレクター。二人は黒海沿岸のサムソンよりキャラバンカーで地中海沿岸を旅行中。

 ジャンはアマチュアのレーシングチームのメンバーであり、これまでヤマハ、ホンダ、カワサキのバイクを乗り継いできた。サッカー観戦も大好きというアクティブ年金生活者だ。

 面白いことにジャンは長年のエルドアン支持者だがニュルギュンはアンチ・エルドアン。彼女はエルドアンがイスラム教を押し付けているようで大嫌いという。やはり意識高い系の女性にはエルドアンは不人気のようだ。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る