韓国は2030年代中後半に国産原潜の進水を目指しているが、核燃料供給という生命線は米国が握る。戦時作戦統制権転換についても、ヘグセス長官は「素晴らしい」との支持を表明したが、具体的な時期への言及は避けている。
会議終了後、ヘグセス長官は平沢のキャンプ・ハンフリーズで在韓米軍将兵を激励し、「厳重な安保環境に直面しているが、韓米同盟はどの時よりも堅固だ」と強調した。
日本から見れば、この動きは二重の意味を持つと言えるだろう。朝鮮半島の安定化は歓迎すべきだが、韓国の軍事力増強は地域バランスに影響を及ぼす。特に韓国への原潜技術の供与は、インド太平洋戦略における日米韓協力という枠組みでの各国の立ち位置が再定義される。
コンセプト「スマート強軍」は誰のものか?
韓国の歴代大統領は国防改革に華々しいキャッチコピーを付けてきた。盧武鉉政権の「国防改革2020」、文在寅政権の「国防改革2.0」、尹錫悦政権の「国防革新4.0」などだ。
そして李在明大統領は、26年度予算案で「スマート強軍」の育成を掲げた。なぜ韓国の国防政策はこうも派手なネーミングを必要とするのか。
その理由は選挙公約と予算獲得の政治力学にある。新政権は前政権との差別化を図り、有権者に「変化」を印象付ける必要がある。同時に、国会での予算審議を有利に進めるため、分かりやすいスローガンで国防費増額の正当性を主張する。
ところが李在明政権の「スマート強軍」には微妙な問題がある。この言葉自体は李政権以前から軍内部で使われてきた既存の概念。国防日報を検索すると、少なくとも18年には使われていたことが分かる。たとえば、陸軍教育司令部は同年から毎年「先端科学技術基盤スマート強軍建設」をテーマにカンファレンスを開いている。
つまり「スマート強軍」は李在明独自の国防コンセプトではなく、前例の踏襲、有体に言えば尹錫悦政権の「国防革新4.0」を実質的に継承したものと見るべきだろう。
実際、李政権の国防予算は前年比8.2%増の66兆3000億ウォンで、AI・ドローンなど国防科学技術育成、韓国型3軸体系の強化、軍人処遇改善を柱とする。これは尹政権の路線をほぼそのまま踏襲している。
唯一の違いは、李大統領が戒厳事態後の「国民の軍隊再建」を強調し、大将7人全員を交代させるなど軍首脳部の粛清を断行した点だ。しかし、国防の中身自体に大きな変化はない。
原潜建造を含むスマート強軍の育成と、防衛産業輸出を国家戦略とする韓国の姿勢は、日本の防衛産業政策にも影響を与えずにはいないだろう。派手なスローガンの裏で、韓国国防は着実にその実力を高めている。
