相馬は伊丹の書きかけの稟議書を見つけ出し、稟議書を書き上げようとする。決済責任者の支店長が出張のために、本店の融資部長の会議室前に花咲を控えさせて、完成した稟議書を送って直接決済を仰ぐ。
融資の実行は締め切りの午後4時30分の間際になされた。中小企業の経営者のほっとした表情に、支店内には静かに拍手がわいた。そこに、事態を招いた伊丹が取引先回りから帰ってくる。
融資課長は伊丹に対して、中小企業の経営者に対して謝罪するようにしかりつける。
経営者に歩み寄る伊丹。
「倒産しなくてよかったじゃないですか」
花咲は詰め寄る。
「よくそんなこといえますね」
伊丹は言い返す。
「あんたはバカじゃないの。なにもわかっちゃいないな。5000万ぐらいの融資が実行されなくて倒産するような会社はいずれ倒産するんだよ」
花咲の決めゼリフ「お言葉を返すようですが」がでる。
「大バカ者はあなたです。あなたは入行4年目で銀行業務について十分に知らない。いずれは経営者になって人の上にたつかもしれませんが、いまはただの4年目の銀行員なんです」
一編の推理小説のような趣
舞台は銀行という場所ながら、それは一編の推理小説のような趣がある。一連の池井戸氏の作品は、どのようなジャンルに分類されているのだろうか。
「花咲」もそうだが、「ルーズヴェルト」の展開もまた、二転三転推理小説のようになってきていると考えるのはわたしだけだろうか。第9話(6月15日)に至って、主人公の青島製作所社長の細川充(唐沢寿明)の敵役と思われた、専務の笹井小太郎(江口洋介)が実は青島製作所を守るために敵役を演じていたことがわかる。