管理された山火事
海外では、あえて火事を起こす手法が注目を集めている。コントロールドファイヤー、管理された山火事と呼ばれるものだ。主にネイティブアメリカンや北欧のサーミ、オーストラリアのアボリジニーなど先住民が行ってきた森林管理方法である。小規模な火入れを定期的に繰り返すことで、森林内の可燃物を減らし、火災の大規模化を防ぐのだ。
もしかしたら、日本も過去に頻発した山火事に、同じ効果があったのかもしれない。加えて戦前から昭和30年代までは、枯れ木や落葉の採取が日常的に行われた。薪など燃料用や農地に入れる堆肥づくりに使われたのである。それが山の可燃物を減らした。
ところが近年は、林業は衰退し、生活に根ざした森林利用も行われなくなった。結果として林内に落葉落枝を溜め、雑木も繁らせてしまった。また山里の過疎化も進行し、初期消火を難しくした。それも大規模化の一因かもしれない。
実は植物が育つ条件がそろう焼け跡
もう一つ考えておきたいのは、焼け跡の今後だ。
世間では、すぐに植林をすべきという声が強い。また数百haも焼けたと聞くと、一面焼け野原で植物は何も残っていない状態を思い浮かべがちだ。
しかし、実際の山火事では、太い立木は残ることが多い。また土は熱を伝えづらく、地表下は意外と温度が上がらない。実験では、地表が摂氏500度を超えた地点でも、地下10センチ(㎝)では26度程度だった。おかげで埋もれた種子や地下茎は生き残っていた。
それに土中水分が蒸発する過程で土をふかふかにする。落葉などが焼けてできた灰は、カリやリンなどを豊富に含んで栄養となる。上を覆っていた藪などがなくなれば日光がよく差し込む。さらに草木の害虫や病原菌が死滅したり、土に溜まったアレロパシー物質(植物の出す成長阻害物質)を昇華させたりする効果も報告されている。
また火事の後に生える植物も少なくない。セコイヤ、ユーカリ、バンクシアなどは果実が焼けることで発芽する。日本でもヤケノシメジなどのキノコ類は焼け跡によく生える。これらの種は、定期的に火事が起きることを前提に進化してきた植物や菌類だ。
このように見ると、焼け跡は植物が育つ条件が揃っているのだ。鎮火後の再生は十分期待できる。もちろん、裸地状態が長く続けば土壌の流出なども起きるから、土地の状況を見極めて植樹も必要だろうが、まずは自然の復元力を期待したい。
山火事は、自然環境を激変させる。また人の生活への影響も過少評価は禁物だ。しかし危機を煽るだけでなく、火の生態学をひもといて山火事発生のメカニズムをよく知ることが対策につながるだろう。
