要するに米側は、露側の偽装工作や軍事的脅しには全く屈しない、極めて強い姿勢を示したのである。本件につきプーチンは沈黙している。
これはプーチンにとって、米側の行動が計算違いであった可能性を示唆している。また最近は、ロシアの「闇の船団」を露海軍アセットが護衛するケースが少なくないが、今次拿捕はこれに対する抑止ともなるだろう。
ベネズエラ軍事作戦のロシアへの脅威
次に、ベネズエラのマドゥロ大統領拘束にかかる軍事作戦の成功は、ロシア軍並びにロシア製武器の評価を大きく低下させることに繋がるだろう。
2時間半たらずで作戦目的を完了した米軍の対ベネズエラ軍事作戦と、侵攻からすでに4年近くを経てもなお目的を達成できていないロシアの「特別軍事作戦」との差は余りにも明らかである。
また、ベネズエラは、ラテンアメリカで最大規模の多層防空システムを整備しているとみられてきたが、今回の米軍事作戦の成功は、これらベネズエラの防空装備が米軍の急襲に対して全く役に立たなかったことを示した。ベネズエラの統合防空システムの装備の大半は、ロシアと中国から供与されたものであるが、今回の米軍による作戦で、これら「多層防空網」は、米国の爆撃機や戦闘機、偵察機などを駆使した攻撃の前にあえなく破壊され、わずか2時間半足らずのうちに大統領が拘束され、米国に移送されていった。
これはロシア軍にとって衝撃であったと同時に、ロシア製兵器の国際武器市場における評価を大いに引き下げるものとなったであろう。ウクライナ戦争の継続で財政赤字を膨らます一方のロシア政府にとって、これは大きな痛手となる。
さらに、米国によるベネズエラの原油供給に対する支配強化は、油価の下げ圧力となって、ロシア財政を一層悪化させる可能性がある。油価が1ドル下落した場合の、ロシアの税収減は年間おおよそ10億ドル程度と見積もられるところ、59ドルの想定が50ドルに9ドル下落すれば、年間で約90億ドル(8280億ルーブル)の税収減となる。
このような赤字を埋め合わせる手段は、国債発行と増税しかないが、国債については、ロシアの10年もの国債の利回りは14%を超えており、多額の国債増発は財政負担をさらに大きくする。結局のところ、切り札は増税ということになる。
本年1月からすでに付加価値税が20%から22%に上げられたほか、最低課税基準の引き下げなども行われており、低所得者層の負担がさらに増える傾向にある。これは政権に対する潜在的な抵抗要因となるだろう。

