2026年2月26日(木)

教養としての中東情勢

2026年2月26日

 慌てた大統領はSNSへの投稿で「ケイン議長がイラン攻撃に反対しているというのは100%誤り」と火消しに走った。ケイン議長は昨年6月にイランを攻撃した「12日間戦争」や先月のベネズエラ攻撃を指揮し、信頼度が高い人物として知られており、政権内の亀裂が暴露されたのは大統領には痛手だった。

イラン、泥沼化狙う

 米国はイランに対し、「核開発の放棄」「弾道ミサイル開発制限」「中東各地の武装勢力への支援停止」の3つを要求しているが、核開発以外の分野が合意に盛り込まれるかは不明。核問題に関しても、米国がウラン濃縮施設をイラン国外に建設してイランと周辺国が共同管理する構想を示し、イランが前向きな姿勢を示したとされる。だが、これらの点もどうなるかはっきりしない。

 米欧の制裁で経済的な困窮状態にあるイランが戦争を回避したいのは本音だ。国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長が「イランにごく小規模のウラン濃縮を認める」という調停案を示しているが、濃縮活動の完全停止を主張するトランプ大統領がこれを飲むかどうか。イラン側の最終案は25日までには大統領に届けられる見通し。

 しかし、追い詰められたイランが国家の主権や尊厳を踏みにじられるような要求を受け入れると考えるのは早計だろう。「ハメネイ師にとって米国の要求に屈するのは戦争よりもリスクが高い」(米紙)からだ。下手に譲歩すれば、革命防衛隊や軍部の離反を招き、クーデターも想定される事態になってしまう。

 同師はこれまで「米国にとって問題なのはイスラム共和国そのものだ」と述べ、トランプ政権の真の狙いがイランの聖職者政権の転覆にあると非難してきた。トランプ大統領も「体制転換が最善」と公言し、敵対する2人の見方は一致している。しかし、攻撃によってイラン国内が「反米」で団結する懸念も強い。

 米国がいくら「限定的」と言ってみても、捨て身のイランが本気で報復攻撃に出れば、「攻撃が攻撃を呼び」あっという間に本格的な衝突に発展しかねない。11月に中間選挙を控えるトランプ大統領は速やかにイランを屈服させて勝利を宣言、選挙を有利に運びたいところだが、イランは逆に戦争を泥沼化させたいと考えている。

 「イランにとって最後の手段は中間選挙を“人質”に取ることだ。戦争が長引けば、困るのは選挙に悪影響が出ることを恐れるトランプだと読んでいる。ホルムズ海峡の航行が止まるようなことになれば、米国内のガソリンの価格が高騰。1ドルでも2ドルでも価格が上がれば、共和党は選挙に負ける」(識者)。

トランプ大統領の一般教書演説に合わせて行われた反対デモ。米国民からの批判は命取りだ( Anadolu /gettyimages)

 最新の米CNNの世論調査によると、一般教演説を前にした大統領の支持率は過去最低の36%にまで下落した。中西部ミネソタ州で不法移民を摘発中に市民2人が射殺され、国民の批判を招いていること、少女らの人身売買に問われたエプスタイン氏に関する文書で自身の名前が登場し、身内の支持基盤からも批判が噴出していることが大きな要因だ。

 さらには看板政策である「トランプ関税」が最高裁で否定されたこと、そしてなによりもインフレが止まらないことがトランプ氏の低支持率の大きな理由だろう。劣勢を挽回するために中間選挙前に国民受けするサプライズを作らなければならない。それがイラン攻撃の裏の理由だとの見方も強い。


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