2024年5月19日(日)

研究と本とわたし

2014年7月17日

 具体的に言うと、仏教の「律」と呼ばれる、修行僧たちの共同体を運営する戒律にかんする膨大な文献が、従来はひとつの固まりであると思われていました。しかしそれらは実は幾重にも重なった玉ねぎのような層を成しており、それを解きほぐすための糸口が見つかったのですが、現在は言わばその玉ねぎの皮を剥いている最中であると言えます。

 その皮を一枚一枚剥いていくと、最後に出てくるのが最も古い、仏教の最初期の姿であるということになります。このことを理論的に証明すると同時に、それが正しいかどうかを別の切り口からも検証してみる。要は仏教文献学の中で、初めて科学的な検証作業を含めた理論を使って、文献を分解し、成立過程を明らかにするというのが夢です。これにはあと10年くらいかかるのではないかと思います。

 それから、もしこれが正しければ、最後に出てくる玉ねぎの芯は、釈迦の時代にいちばん近いということになりますから、仏教は一体どういうプロセスで今の形になったのかという歴史の再構築ができる。同時に“釈迦は何を言ったのか”という本当の仏教の起源がわかると思うのです。これは本当の夢ですけどね。

――貴重なお話をお聞かせいただきまして、どうもありがとうございました。

佐々木閑(ささき・しずか)
1956年生まれ。京都大学工学部工業化学科および文学部哲学科仏教学専攻卒業。京都大学大学院文学研究科博士課程満期退学、米国カリフォルニア大学バークレー校留学。現在、花園大学文学部仏教学科教授。文学博士。
1992年、日本印度学仏教学会賞。2003年、鈴木学術財団特別賞受賞。主な著書に『出家とは何か』『インド仏教変移論』(大蔵出版)、『科学するブッダ 犀の角たち』(角川ソフィア文庫)、『日々是修行』(ちくま新書)、共著に『生物学者と仏教学者  七つの対論』(ウェッジ)、訳書に『大乗仏教概論』(鈴木大拙著 佐々木閑訳岩波書店)がある。

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