中国は自国の利益を害する国に厳しく対抗してきた。2017年に韓国が米国のミサイル防衛システム設置を始めた際、中国は韓国からの輸入を幅広く制限。20年に豪州首相がコロナウイルス起源の独立調査を呼び掛けた際は、幅広い豪州製品を輸入規制した。
昨年中国は、レアアース対米輸出を制限し自動車産業等の生産を阻害したが、それはトランプ政権の対中関税低下につながった。最近中国は世界各国に、「台湾は中国の一部でいずれ再統一されるべき」とする中国の主張を受け入れるよう圧力を強化してきた。
国連では、台北の議席を中国が占めることを可能とした1971年決議は台湾への中国の主張を国際社会が認めたことを意味すると中国は主張している。中国が台湾に対する主張への支持を友好国との共同声明に記入する機会が増えている。
中国の圧力への高市の抵抗は中規模国が大国の圧力から身をかわす際に参考になる。1月にダボスでカナダのカーニー首相は「主張を受け入れ、従属すれば、安全が手に入ると期待する傾向があるが、そうはならない」と述べた。同盟国に関税を課し領土譲渡を求めるトランプ大統領の強硬な外交・経済政策を受けカナダ・英国等は中国との限定貿易合意を選択したが、中国と緊密な貿易・投資関係を持つ一方、安全保障の脅威を受けている国は妥協の余地が限定的だ。
台湾と日本は中国の世界的野望の最前線にいる。トランプ政権の不確実性ゆえに各国はヘッジをしているが、中国至近の国々には難しい。
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中国は圧力を緩めない
自民党の衆議院選挙大勝直後には、中国が対日圧力の失敗に気付き圧力が弱まるのではないか、と見る向きがあったが、それは間違っている。高市発言に対する中国の問題の根源は、習近平主席本人の面子を潰したということであり、習近平の「高市を潰せ。日中経済関係は維持せよ」との指示は不変なので、高市政権が強くなったのであれば、論理的帰結はより強く叩かなければならない、ということになる。ともかく、習近平の指示が変わらない限り、恫喝外交の失敗から学ぶこともできない、というのが中国外交の限界なのだ。
ミュンヘン安保会議での王毅外相の発言でも対日強硬姿勢は一貫している。例えば、同外相は「日本には台湾への侵略・植民地支配の野心がいまだ残り、軍国主義の亡霊が徘徊している」と発言。これに対し、出席していた茂木敏充外務大臣より「事実に基づかない」として累次反論があった。
一方、米中関係については、4月のトランプ訪中を控え、ミュンヘンでルビオ国務長官と会談し、「安定的な発展を推進」することで一致した。安保会議の場では、「国際システムが機能していないのは一部の国が自国の利益を優先しているためで、協力の雰囲気を悪化させている」と明言しないまでも米国批判をする一方で、米国には中国との「協力」と「対立」という二つの道があるが、「前者の展望を望んでいる」とも語り、決定的な対立を避けている。3月の高市首相訪米は益々重要になる。
