著作権について考える上で注意すべきは、創作の自由を過度に制限しないという配慮も必要であることです。特定の髪型や服の色、表情などを特定の権利者だけが独占できるとすると、創作活動全体が窮屈になってしまいます。そのため、著作権法では、権利者の保護と創作活動の自由とのバランスが重要視されます。
作中に登場する「固有名詞」に著作権は発生するのか?
――キャラクター名などの固有名詞はどうでしょうか?大人気作であれば、キャラクター名とそこから連想されるイメージが容易に結びつきそうですが。
キャラクター名、タイトル名、企業名やブランド名といった固有名詞は、通常は著作権法で保護されません。短いフレーズなので、それを著作物として作者に独占させるべきでないという考えからです。
例えば、「ルフィ」という名前のキャラクターを『ONE PIECE』以外の作品で登場させたり、実在の企業名やブランド名を作品内に登場させたりしても、著作権侵害にはなりません。朝井リョウの大人気エッセイシリーズ『時をかけるゆとり』『風と共にゆとりぬ』『そして誰もゆとらなくなった』も、それぞれ有名作品のタイトルをもじったものですが、そもそもこの程度の短いタイトルに著作権は発生していないため問題はありません。
なお、特に企業名やブランド名は商標*5登録されていることも多いのですが、あくまで作品の中に企業名・ブランド名を登場させるだけであれば、商標権侵害も考えにくいです。
誤解されがちですが、商標権に「商標登録した言葉を一切他人に使わせない」という効果はありません。商標権は、商標が他人の商品・サービスの生産・提供元を示すような方法で使用されることを防ぐものです。商品名に他人の商標を使う場合などですね。
もっとも、作品の中に企業名やブランド名を登場させても、その作品を出版しているのがその企業・ブランドだとは誰も思わないでしょう。そのため商標権侵害にはならないのです。
したがって、作中での固有名詞の利用は基本的に可能です。実際の商業作品においては固有名詞をもじるような表現に留めたり、一部分を変えたりしていることもありますが、これは法律との関係というより、制作者側の配慮によるところが大きいでしょう。
――あのもじりって、配慮だったんですね……!
このように、ひとくちに二次創作といっても「著作権侵害になりやすい類型」と「なりにくい類型」があると言えます。また、イラストが類似するといった著作権侵害になり得る場合でも、例えば、次の1または2に当たるならば適法となります。
1. 私的な複製・翻案に留まるもの:二次創作を自分だけで楽しむ、ごく親しい友人にだけ見せるといった場合
2. 権利者の許諾を得ているもの:二次創作ガイドラインに沿ったものを含む
著作権法が定める他の例外規定で許される可能性もありますが、多くの二次創作の場面で出てくるのは、この2つです。
*5 商標 商品やサービスの出所を他社のものと区別するために使用される名称、ロゴ、マークなどの標識。特許庁に登録することで、登録した範囲で独占的にその商標を使用できる権利を得られる。

