2026年3月26日(木)

冷泉彰彦の「ニッポンよ、大志を抱け」

2026年3月26日

中間選挙に向けた「天王山」

 まず、アメリカ側の事情だが、トランプ政権にとっては11月の中間選挙での勝利は至上命題である。連邦下院は既に与野党伯仲であり、第二期政権発足後の強めの政策を嫌う方向へ無党派層が動けば、民主党が過半数になる可能性は高い。

 政権としてはそこまでは織り込み済みと思われる。そして、下院は単純過半数で弾劾決議を行うことができ、これも第一期政権の際に経験したことでもあり、計算には入っているであろう。

 問題は連邦議会の上院である。現時点では共和党は定員100人の中で53議席を占めており、今回の改選は「クラス2(第2組)」で改選数は33となっている。従って、民主党が逆転するのは簡単ではない。また、仮に弾劾裁判になった場合にも上院は3分の2の賛成が必要であり、民主党が単独で67議席を取るというのは不可能である。

 では、どうして大統領は、ここまでの切迫感を示しつつ激しい政策を繰り出し続けているのかというと、そこには理由がある。

 それは上院の共和党議員団には穏健派が多く、いざ弾劾裁判となると造反に回るのではという懸念があるからだ。特に今回非改選の議員の多く、とりわけ前回24年の選挙に通って30年までの任期を得ている議員には造反の可能性を感じている。

 これに対抗するには、今回の改選議員の中で穏健派の議員に刺客を送って、コア支持派の候補に入れ替えるしかない。そこで、今から7月にかけての党内における上院議員候補の予備選を「天王山」と位置づけている。

 この予備選で自派候補が勝利するには、戦争をはじめとした激しい政策を繰り出して「踏み絵」を踏ませるだけでは足りないのであって、何よりも景気の後退を防がねばならない。具体的には株安と失業を防ぐ必要がある。連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長と、あそこまで激しい確執を繰り広げたのには、この問題があり、大統領としては「利下げ」にこだわっている。

 一方で現在のアメリカの通商政策は、徹底した保護貿易主義である。関税政策については、紆余曲折の真っ最中であるものの、製造業の国内回帰が究極の目標だ。けれども製造業復権だけでなく、通商によって相手国が売上利益を得ることを「アメリカを食い物にしている」という言い方で非難するなど、グローバルなサプライチェーンのあり方そのものを批判して、支持者の関心を集めることも重視している。

 従って為替政策は「ドル安誘導」への願望が強い。もちろん、クラシックなアメリカの保守主義は、特に金融界の利害を背景に強いドル志向であるから、保守政治の中では例外に属する。

経済的に厳しい立場だった日本

 一方で、高市首相の立場はより切迫している。まず就任後の為替相場は穏やかながら明確な円安傾向にある。総理総裁候補として長年「積極経済」を主張してきた首相には、国際市場からは財政規律を緩める政治家というイメージが定着しており、特に消費減税の問題は円安要因として位置づけられているからだ。


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