さらに問題なのは、超長期国債の金利が高騰していることだ。このまま、財政規律が緩んだままでは超長期(例えば40年)のスパンでは日本の財政は顕著な悪化が進む可能性が濃いという判断から、市場において金利が上昇している。
数カ月前までは、ドル円相場が円安に振れるのは「日米の間に金利差がある」からだという説明がされていた。けれども、現在起きているのは日本の金利が上がって金利差が縮んでも円が高くならないという現象である。金利差の影響を、財政悪化懸念が帳消しにしていると言えよう。
問題は3月末という現在のタイミングである。まず、日本の大企業の多くは多国籍化していて連結決算における海外比率が高い。従って、円安になれば円建ての売上利益は膨張する。反対にこのタイミングで突如円安になると多くの企業の決算は暗転してしまい、新年度の賃上げなども吹き飛んでしまう。また、金利に関してもさらに騰勢が強まるようなら、新年度の国債利払いが肥大して予算が組めなくなる。
そんな中で、例えば日米首脳会談のタイミングでアメリカがいきなり強めの「円高ドル安誘導」を行うような、それこそプラザ合意の二の舞のような事態となれば、高市政権は窮地に陥るところであった。同じように米国の利下げというのも、仮にドル安誘導の文脈と連動するようだと、円をさらに押し上げてしまう。
その一方で、仮にペルシャ湾に対する問題で、日本が困難な立場に追い込まれれば、中長期の国力衰退につながるとして国際市場では円は売られて下がり、同時に長期国債は暴落(金利上昇)となっていたかもしれない。
そう考えると、今回の日米首脳会談の位置づけは、薄氷を渡るような危ない状況、あるいは難しい多元連立方程式を解かねばならない状況であったとも言える。結果的に、日本は自国の立場を説明してアメリカの了承を得るとともにアメリカ=イランの間でも、暫定停戦に近いコミュニケーションを引き出すことに成功した。同時にパウエル議長は利下げを「しない」宣言を行い、今回は連銀内でも異論がなく、政権もこれを受け入れた格好である。
日本の対米投資の効果
日本株は多少の騰落があったが、円はやや安い水準で推移している。超長期国債金利も劇的には改善していないが、落ち着いている。ということで、高市政権としては年度末の危機をほぼ乗り切ったと言えるだろう。
その一方で、今回の首脳会談では改めて日本の対米投資を進めることが確認された。また直前には日鉄によるUSスチール買収の進捗があり、アメリカ側には投資がスタートしたと受け止められている。ソフトバンクによる大型投資も披露された。
こうした日本からアメリカへの大型投資については、日本円への信認が揺らぐ中でのキャッシュフローの方向を考えると、一気に円の水準を下げる要因になるという見方もある。
