2026年4月1日(水)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2026年4月1日

「一部の右翼」から「日本社会全体」へ

 中国の対日批判には、一定の「型」がある。靖国参拝や歴史教科書問題によって引き起こされた日中対立の局面において、批判の矛先はあくまで「一部の右翼勢力」に限定されていた。日本の主流社会や日本国民は中国と立場を共にしており、敵は右翼のみという構図である。

 この主張を強調するために、かなり小規模な日本政府への抗議デモであっても、中国で報じられることが多い。カメラの画角を工夫し、人数の少なさを悟らせない絵作りなど達人の域である。

 ところが今年に入り、この「型」は大きく書き換えられた。26年1月9日、人民日報は「新型軍国主義将把日本再次引向深渊(新型軍国主義は日本を再び深淵へと引きずり込む)」と題した論評を掲載した。

 二次世界大戦敗戦前の日本は、皇国史観などの教育と、虚構の勝利を告げる大本営発表を駆使することによって、日本国内に現実とはかけ離れた虚構の情報空間を作り出し、国民を欺いていたと振り返る。その上で、現代の日本で類似の動きが進行していると断じる。

 「国家正常化」を旗印に防衛政策の転換を推し進め、歴史教科書を改竄し、若い世代を洗脳しつつある。日本国民全体が右翼勢力に騙されて誤った道へと進む「新型軍国主義」に日本が陥りつつあると指摘する。

 すなわち、中国にとっての敵はすでに「一部の右翼勢力」にとどまるものではない。「右翼勢力に洗脳された人々、新型軍国主義に突き進む日本」へと拡大しているのだ。

 この論評記事の執筆者は「鐘声」。「鐘」の中国語読みはジョン(Zhong)で「中」と似た発音だ。すなわち、この「鐘声」とは「中国の声」をもじってつけたペンネームで、中国の外交姿勢を伝える最高レベルのメッセージとして理解されている。中国外交においてきわめて強い“政治シグナル”とされる。

転換は「台湾有事」発言の前から

 「新型軍国主義」という言葉自体は過去にも何度か試用されたことがあるが、人民日報の「鐘声」コラムに取りあげられた意味は大きい。「日本社会全体が右翼に洗脳され、新たな軍国主義に向かっている」という見立てが中国共産党の公式見解として定着したことを意味するからだ。

 なぜ、中国は日本批判の「型」を新型軍国主義へと転換したのだろうか。直接の引き金となったのは、昨年の高市早苗首相の台湾関連発言であるが、おそらくそれだけではなさそうだ。高市人気、その前の参政党の躍進など、対中強硬姿勢を強く打ち出す政党、政治家が高い支持を得ることに、中国共産党は警戒感を抱いていたとされる。

 ならば、日本社会の反中感情を弱めるような施策を中国側が打ち出すべきだったのではないか。実際に模索していたふしはある。


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