24年12月に岩屋毅前外相が訪中し、第2回日中ハイレベル人的・文化交流対話が開催されたが、その際に交わされた覚書には日中間の友好ムードを高めるための条文が多く盛り込まれている。興味深いのは「ニューメディア交流・協力を支持し、両国のインフルエンサーの相互交流を促進する」という一節だ。テレビに出演するような芸能人では若者の心に届かない。ユーチューバーなどのインフルエンサーに中国に関するコンテンツを作ってもらえばという趣旨なのだろう。しかし、この後も日本社会の反中意識は高まるばかりで、ついに新型軍国主義として日本社会そのものを問題視する方向へと転換するにいたった。
ポケモンとSnow Manも新型軍国主義
新型軍国主義という新たな「型」は、中国の対日批判メッセージを変えているだけではなく、対日制裁の手段にも影響を及ぼしている。
1月6日、中国商務部は「デュアルユース物品の対日輸出管理の強化に関する公告」を発表し、レアアースなど日本の軍事力強化に寄与する物品やサービスの対日輸出規制を厳格化すると発表した。2月24日には三菱重工、川崎重工、IHI、防衛大学校、宇宙航空研究開発機構(JAXA)など20の企業と組織を輸出管理リストに指定している。
レアアースという、中国にとっての伝家の宝刀をちらつかせて圧力を高めたわけだが、中国側の論理としては、日本で新型軍国主義が広がり、軍事大国化の道を進もうとしている。ならば、その軍事力強化を抑止しなければならないという理屈になる。
また、2月8日には人民解放軍機関紙の解放軍報のウェブ版にあたる中国軍網に「文化・スポーツ分野における日本軍国主義の台頭に警戒せよ」と題した記事と動画が掲載された。
・靖国神社でのポケモン・カードゲームのイベント
・『名探偵コナン』と『僕のヒーローアカデミア』のコラボ
・アーティストのTHE RAMPAGEがテレビ番組でナチス式敬礼を連想させる振り付けを披露
・アイドルのSnow Manのミュージックビデオに、戦犯の名と「昭和15年」の刻印が入った日本刀が登場した。
・サッカー選手の三笘薫が所属クラブでの記念撮影の際、日本兵・小野田寛郎の画像を手にしていた。
といった事例を取りあげ、「青少年が日常的に接触するスポーツ選手や芸能アイドル、アニメ、ゲーム、そして教科書を通じ、彼らが好む形で美化・歪曲された虚構の歴史を刷り込もうとしているのだ。その狙いは、真実の歴史記憶の継承を根本から断ち切り、軍国主義復活に向けた思想的布石を打ち、社会的な土壌を整えることにある。平和を愛するすべての人は、文化・スポーツ領域における日本軍国主義の浸透を警戒すべきである」と記事をしめくくっている。
荒唐無稽ないいがかりのようにも思えるが、戦前の日本がメディアやスポーツ、コンテンツを駆使して日本国民を虚構の情報空間に閉じ込め洗脳していた、今はその再来だという、新型軍国主義のコンセプトに則った批判とみるべきだろう。

