このように全く異なる道筋に分かれるという意味で、今は岐路である。確かなことは、次の時代がこれまでの時代よりも、分断がより激しく、危険がより大きなものとなるということである。
10 年前には、冷戦の再来となることは最悪の事態と考えられていたが、今ではそれは最良の希望である。どの道筋となるか世界で最も強大な国である米国の動きに多くがかかっている。
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「二つの世界」と「勢力圏分割」の間
日本でも注目度の高いハル・ブランズ教授による、今後の世界のあり方についての予測シナリオである。ブランズは、①「二つの世界」(=新冷戦)、②「いくつもの帝国」(=勢力圏分割)、③「無政府状態の混乱」と三つのシナリオを提示している。ブランズは、「二つの世界」が現状では「最良」としつつも、どれに向かうかはまだ定まっておらず、米国の行動が大きな影響を与えるとしている。
確かに予測は難しいが、あえてしてみると、当面、「二つの世界」と「勢力圏分割」シナリオの間の状況が続く可能性が高いのではないかと考えられる。
まず「二つの世界」は、ブランズの言うとおり「最良」かも知れないが、「米国が率いるブロック」の凝縮力は、第二期トランプ政権下で大きく損なわれた。トランプの欧州諸国への対応やグリーンランドへのこだわりは、トランプは同盟国の価値をどう考えているのかとの深刻な疑問を投げかける。
トランプが習近平やプーチンに向ける姿勢は、敵対国に対するものというよりは、大事な取引相手に対するものとも感じられる。今後のことを考えると、たとえトランプが大統領の座から去ったとしても、トランプを大統領の座に押し上げた米国内の潮流が大きく変わると考えるのは楽観的過ぎるだろう。
一方、「米国が率いるブロック」の凝縮力が全く損なわれているわけでもない。米国への不安から、フランスの核抑止力の保護の対象を欧州の近隣国に広げるための討議が進められているが、それらは、依然として米国による拡大抑止の補完と位置づけられている。先般の高市早苗首相の訪米時に、米国自身が発出したファクトシートは、「台湾海峡」や「北朝鮮」を含む「地域安全保障」における日米の共同歩調が明確に示されるものとなった。
次に、「いくつもの帝国」シナリオについて考えてみると、これを思わせる兆候がないわけではない。中ロの行動は言うまでもないが、米国の「西半球」へのこだわりは、「勢力圏分割」シナリオを想起させるものである。
