2026年4月10日(金)

トランプ2.0

2026年4月10日

 この点について、トランプ氏は4月1日、国民向け演説で、「(我々の軍事作戦で)重要人物は残らず死亡し、ひとつの政権を崩壊させた。すでに体制転換させた」と弁明した。 しかし、イランでは最高指導者ハメネイ師亡き後、後継に息子のモジタバ師が就任し、体制崩壊の明確な証拠は今のところ見当たらない。

 “神権体制”の後ろ盾になっている「革命防衛隊」はいぜん強力な戦闘能力を保持し続けている。大統領以下、イラン政府側の統治体制も「革命防衛隊」の対米・イスラエル強硬路線を継承し、米政権が求める性急な完全休戦に応じる姿勢を見せていない。

 米国内外の専門家の間でも、トランプ氏が達成したとする「体制転換」を額面通り受け止める見方は皆無だ。

ホルムズ海峡封鎖の影響を見通せず

 第三の判断ミスは、作戦開始に当たり、トランプ大統領はイランが報復措置としてホルムズ海峡封鎖に乗り出し、その結果、湾岸諸国からの原油輸出が停滞、世界経済に重大な影響が出ることをほとんど想定していなかったことだ。米国内でもガソリン価格高騰による市民生活への影響が広がり始めており、ただでさえ低迷気味の大統領支持率をさらに押し下げる結果となっている。

 この点に関しても、大統領は攻撃開始直後、米国への影響を危惧する報道陣の質問に対し「世界一の石油、天然ガス生産国である我が国は何も困ることはない」「ガソリン価格高騰は一時的なものであり、すぐにおさまる」などと語っていた。 

 しかし、11月の中間選挙を控え、米国への悪影響を無視できなくなった大統領は、ホルムズ海峡の自由航行確保を同盟諸国に呼び掛ける一方、イラン側に「早期停戦」を呼びかけるなど、ちぐはぐな対応が続いてきた。今回の「2週間停戦」も、トランプ政権側の焦りを反映したものだ。

 第四に、トランプ氏は大規模攻撃を受けた後のイラン側の継戦能力を軽視していたことが挙げられる。

 大統領は攻撃開始1週間後の3月6日、自らのSNSでその後の対応について「無条件降伏以外、イランとは一切取引しない」と強気の姿勢を見せた。この発言の背景には、2月28日、米・イスラエル軍による第一波の大規模攻撃でイラン政権中枢部の建造物・施設を破壊し、最高指導者ハメネイ師以下要人多数を殺害したほか、空軍、海軍基地の戦闘機や軍用艦に多大な損害を与えたことで、イラン側が戦意を喪失し、早晩降伏するとの読みがあったとみられる。

 ところが、ハメネイ師亡き後、後継の最高指導者となったモジタバ・ハメネイ師が声明(代読)で「徹底抗戦」の姿勢を明確に打ち出し、「革命防衛隊」もイスラエルやアラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなど親米諸国への波状攻撃に出たことで風向きが変わり始めた。

 これを受けて大統領は3月13日、米公営ラジオ「NPR」とのインタビューで「イランが実際に無条件降伏するかどうかは、気にしない。要は、米国が圧倒的立場を確保していることだ」と態度を一変させ、苦渋の姿勢をにじませた。

 その後、イラン軍が4月2日、侵犯してきた米軍F15戦闘機、A10対地攻撃機の2機を撃墜したことも明らかになった。これより先、大統領は「イラン側の防空体制を壊滅させた」と豪語していたが、実際はイラン軍が地対空ミサイルなどかなりの反撃能力をいぜん保持していることを裏付けたかたちとなり、面目を失った。

 このほか、イラン側が戦時体制下で無数に秘匿しているドローン兵器も、米軍にとって厄介な存在になりつつある。巨大な破壊力を誇る最新鋭の米軍兵器に対し、多数の通常型ミサイルやドローンで対抗する「非対称戦争」は全く予期しなかった事態だ。

濃縮ウランの問題も解決できず

 第五の誤算は、イラン側が保有する濃縮ウランに関するものだ。トランプ大統領は昨年6月、イラン核関連施設を強力な破壊力を持つ「バンカー・バスター」大型爆弾で爆撃した際、「我々はナタンズ、フォルドゥ、イスファハンの重要核施設をことごとく破壊し、イランの核能力を無能にした」と公言した。

 ところが、その直後、国防総省の情報機関「国防情報局」(DIA)が作成した作戦評価の内部メモで「イランが地下に秘匿している濃縮ウランは無傷のまま残された」との判断を下していたことがリークされた。さらにこれに続いて、国際原子力機関(IAEA)も独自に調査した結果、イラン側がナタンズ、イスファハンの地下施設にいぜんとして60%濃縮ウラン440キロと20%濃縮ウラン200キロ近くを保有していると結論づけた。


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