2026年4月10日(金)

トランプ2.0

2026年4月10日

 そして今回の対イラン攻撃においても、トランプ氏が目論んだ「地下秘匿施設壊滅」は実現していない。「核開発阻止」をイラン作戦の核心的目標としてきた大統領としては、いまだにその「戦果」を得られず、立場を悪くしていることは間違いない。

 このため、トランプ氏は最近になって、地上軍を投入してでもこれら濃縮ウランの回収を検討中とも伝えられた。そして本人も移動中の大統領専用機「エアフォース・ワン」の機内で記者団に「まだやっていないが、その時が来れば(回収作戦を)決断する」と語ってきた。

 ただ、実際に成功裏に回収するには、特殊部隊だけで1000人近くの投入を要し、なおかつ濃縮ウラン秘匿地点はペルシャ湾岸の最も近い米軍基地からイラン領内に480キロメートル近く入った内陸部にあるため、作戦支援のための長い補給ルートを確保しなければならない。しかも、放射能漏洩、核爆発の危険も伴う回収作業にはとくに慎重を期す必要があり、専門家の意見では、作戦開始から国外に濃縮ウランを無事持ち出し、部隊を撤収するまでに「最低10日間」を要するとみられている。

 成功の確率は高いとはいえず、大きな危険をともなうため、かりに「2週間停戦」後、戦争終結のめどが立たなかった場合でも、大統領が果たして回収作戦を強行するかどうかにも疑問が残る。

誤算の原因

 では、大統領はなぜ、このようにいくつもの判断ミス、誤算を重ねてきたのか。その背景にあるのが、大統領就任以来、しばしば指摘されてきたトランプ氏個人のインテリジェンス軽視性向だ。

 一国の安保政策立案に重大な役割を担うインテリジェンスには、直近の情勢報告のほかに、政策が及ぼす中長期的展望と影響の客観的分析が含まれる。米国の場合、歴代大統領は、重大な政策決定に資するため、毎日刻々と変わる内外情勢や中長期的展望についてあらゆる情報機関から集めた重要情報を要約した「President’s Daily Brief」(略称PDB)と呼ばれる極秘ブリーフィングを受けてきた。

 筆者はワシントン特派員時代、カーター、レーガン、クリントン3大統領を直接取材してきたが、いずれの場合も、ホワイトハウス記者室で配布されるその日その日の「大統領公式スケジュール」の中にほとんど毎日のようにこの「Intelligence Briefing」が予定として組み込まれていた。

 勤勉で知られたカーター大統領の場合、通常午前8時ごろから約30分、高齢だったレーガン大統領は執務開始時間が遅かったこともあり午前10時ごろから15分程度、クリントン大統領は午前9時半ごろから約20~30分が慣例となっていたことを記憶している。

 ところが、トランプ大統領の場合、今回のイラン戦争のような有事の際は別としても、通常は朝のブリーフィングを受けない日が少なくなく、「ニューズウイーク」誌などは、実際に受けている回数について「週1回以下」と大見出しで報じるほどの関心事となってきた。

 たまに中央情報局(CIA)分析官などからブリーフィングで情勢説明を受けても、用意された何ページにもわたるブリーフィング・ペーパーに目を通すことはまれで、ほとんどの場合、5~6分程度の「要点」を聞くだけで済ませることが多いという。また最近では、オーラルによる説明に代わり、ビジュアルでビデオ化したブリーフィングに変更できないか、情報当局に検討を指示したとも伝えられる。

 自らもインテリジェンス軽視の姿勢を否定していない。最近もホワイトハウス記者団の追及に対し「対イラン作戦がいつ完了したかどうかは自分の“感”で決める。情報当局の判断に頼らない」などと語っている。


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