2024年11月22日(金)

オトナの教養 週末の一冊

2014年7月24日

 まず、科学的根拠の尊重による環境と資源の保護および持続的利用を徹底し、かつ国家戦略の中心に位置づけ、これに基づく水産の内政および外交を展開せよというもの。2つ目が、水産業の構造改革を直ちに実行すること。例えば漁業権や協同組合の近代化などですね。3つ目が、改革のために予算の組替えを断行すること。資源の管理を科学的根拠に基づき、不要な制度は見直さなければなりません。そして最後が、生産から末端の流通加工、消費までをひとつのチェーンとみなし、情報共有できるよう消費者も関心を持つようにしていくこと。この4つの提言になりますが、重要なのは科学的根拠に基づくということと、海は国民共有の財産であるということです。

――07年の高木委員会の提言以降、どういった進展がありましたか?

小松:抜本的と呼べるような改革はまだなされていません。それでも、わずかながらも進んだことを探せば、2つだけあります。

小松正之氏

 ひとつは、新潟で日本初の本格的なIQの導入に向けて動き出したことです。IQとは、「個別割当方式(Individual Quota)」といい、決められた全体の漁獲量を、それぞれの漁業者に割り当てる方法です。漁業者は自分に割り当てられた量を獲ってしまえば終わりなので、「ライバルより早く、多く獲らなければ」と乱獲の原因となる早い者勝ちの図式にはなりません。

 新潟ではホッコクアカエビ、いわゆる甘エビが対象種となっています。地道な実戦を積み重ねていくことで、日本のモデルとなり、各地でも同様の取り組みが広がっていけばよいと思います。

 もうひとつは、我々は漁業権の優先順位を廃止し、経営能力をもとに企業の新規参入を促したかったのですが、漁業権の問題や漁協は動かなかった。しかし、これまでかきなどの養殖は、ほとんど漁協に許可が与えられましたが、宮城県石巻市の桃浦に石巻桃浦かき生産者合同会社ができ、初めて漁協以外に漁業権が与えられたんです。これは現状維持派からすれば、青天の霹靂なんです。戦後60年何も改革が進んでいなかったことを考えれば、これらの人には大きな変化でしょうね。

 認可を与える順番は、まずは漁協、次に漁業者の集まりとして漁業生産組合、そして民間企業の順です。つまり、桃浦の例は、これまで2番目だった漁業生産組合に1番目の漁協と同じ権利を与えました。ただ、本来は3番目の民間企業のような経営能力のある人に許可を与えなければ抜本的な改革にはならないと思います。


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