2026年5月15日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月15日

国際秩序は力のみで形成されていない

 第一の、そして最も重要な教訓は、「力による平和」のための軍事行動は、その正当性に対し内外の共感を得ることが不可欠であることだ。戦争開始時における米国民の支持という面で見ると、今回のイラン攻撃については、少なくとも攻撃当初の世論調査では過半数が反対している。欧州諸国の反対については言わずもがなだが、中東湾岸諸国も対応は分かれている。

 今回のイラン攻撃については、米国が主張する正当性には多くの国が共感しておらず、また米国自身も、共感を得るための努力をほとんど行っていない。

 第二の教訓は、軍事行動に当たっては軍事・政治目標を明確にすべきことだ。「力による平和」は軍事力行使の目的が明確でなければならず、そうであって初めて「出口」も明確になる。
今般の米軍のイラン攻撃については、体制転換の位置づけを含め、戦争目的の一貫性を維持できていない。ある目標は削除され、当初なかった目標があとで追加されている。そもそも事前段階で包括的な政治・軍事戦略を描いた上で攻撃を開始したのかさえ、疑問に思われる。

 第三の教訓は、軍事行動を国際協力に繋げるべきことだ。「破壊」は単独の軍事行動によっても可能だが、「建設」は内外の協力なくしてあり得ない。軍事行動を起こす場合には、事後の「建設」のための国際協力を如何にして獲得するかが考えられていなければならず、そのためにも第一の教訓である「正当性に対する共感」が必要となる。

 第四の教訓は、他の地域への波及を最小限にすべきことだ。上記の論説ではこの点について、ある紛争に資源を投入することで別の紛争への資源配分が削減され、そこでの抑止が働かなくなることをあげている。まことにその通りであり、この点、特に日本は、欧州や中東への米軍事力の投入が東アジアにおける抑止を損ねる可能性につき、大いに懸念すべきである。

 歴史上、国際秩序は決して力のみによって形成され、維持されてきた訳ではない。多くの者が当該秩序のよって立つ価値観を受け容れ、また「力の強い者」の中に人を惹きつけるソフトパワーを見出していたことによって支えられてきたのである。
「力による現状変更」は、まさに上記に述べたような留意事項が踏まえられることで、「力による平和」になる道が開けるだろう。

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