また、今後5年間の国内総生産(GDP)成長率を年平均で10%以上とする目標を掲げているが、26年第一四半期の成長率は、原油価格の高騰等があり7.83%増と前年第4四半期8.46%から伸び率は鈍化した。直面する課題は、石油価格の高騰等に加え、外国からの投資と外需依存の成長、政府財源の不足、許認可の遅延、電力不安、インフラ工事代金未払い問題など多岐に渡る。
いずれにせよ、共産党体制に対する国民の支持を維持するために、「高い成長率」が不可欠であることをラム氏はよく理解している。
中国、ロシア、米国との関係
次に対外関係について見ていきたい。
第一に、中国との関係については、ベトナムは米中対立の狭間で全方位外交を展開し、「立ち位置」を間違わないよう工夫しようとしているが、過去2~3年、中国からのアプローチにこたえる形で、対中警戒感が弱まり、中国への傾斜が強くなっている感がある。
例えば、ラム氏が習近平氏の招待に応じて、4月14~17日の日程で国賓として訪中した。国家主席兼書記長就任後、初の外遊先であった。24年8月、書記長就任後の初の外遊先も中国であった。
首脳会談では、①中越運命共同体構築の加速、②国境をまたぐ3路線の鉄道整備、③26~27年を越中観光協力年とする、④中国からの投資増、⑤二国間貿易増、⑥海上問題(南シナ海)の適正管理等について合意があった。これに先立つ3月には中国と外交・国防・公安当局の「閣僚級3プラス3」協議の初開催(於ハノイ)。中越両軍の合同巡視・訓練の実施。5Gインフラに中興通訊(ZTE)やファーウエイ導入を初めて許可した。
第二にロシアとの関係だが、24年6月のプーチン氏によるベトナム訪問、原子力発電所の建設合意等、ロシアとはこれまでも良好な関係を維持している。今般のイラン情勢を踏まえ、3月末にチン首相(当時)がモスクワを訪問し、プーチン氏らと会談して「液化天然ガスの供給」に関する予備契約を締結した。
第三に米国との関係を見ると、米国との関係にも配慮している。2月にトランプ氏主導でワシントンおいて「平和評議会」の初会合が開催された時、ベトナムは創設メンバーとなり、ラム書記長が参加した。
他方、貿易に関し、昨年の米国のべトナムに対する貿易赤字額は約1782億ドル(対前年547億ドル増)となり、過去最高を記録した。貿易に関する米国との二国間協定は合意に至っていないが、中国企業のベトナムへの投資は大きく増加しており、また、中国製品の「迂回輸出」は繰り返し指摘されていることから、イラン問題が解決すれば、トランプ氏からベトナムへの圧力が高まることは間違いないと思われる。

