2026年5月21日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年5月21日

 何故、パラセル諸島なのか。これら諸島に領有権を主張しているのは中国とベトナムだけであり、しかも中国が全体を実効支配しているのだから、ベトナムに対抗して埋め立てる必要はなかったはずである。広域的で戦略的な目的があってのことと考えるのが自然であろうが、それは何か。

 他方、ベトナムはスプラトリー諸島の支配下にある21の地形で数年来、埋め立てを推進して来ており、25年3月現在で中国が埋め立てた面積の70%を埋め立てたらしい。この記事には本年中に中国を追い越すとあるが、中国はアンテロープ礁を拡大しつつあるので、南シナ海全体では、中国が優位を維持するのであろう。

 ベトナムが支配する最大の人工島はBarque Canada Reefであるが、拡張中で既に従来の倍以上の大きさらしい。滑走路も姿を現している。ベトナムは中国に挑戦しているように見えるが、フィリピンに対する乱暴な対応とは対照的に、何故か中国はベトナムの埋め立て努力に沈黙を保ち、邪魔立てをしていない。

持続的な物理的プレゼンスと執拗な行動しかない

 この記事は、最も大きな驚きは米国の沈黙だと書いている。ベトナムは兎も角、何故、米国は中国による埋め立て再開に沈黙しているのか。そういえば、南シナ海における米海軍艦艇による「航行の自由作戦」が行われたことを聞かなくなって久しいが、無駄だと思っているのか。

 南シナ海の秩序は力によって変えられる危険に晒されている。これに対抗するには持続的な物理的プレゼンスと執拗な行動しかない。

 南シナ海はトランプ政権の「国家防衛戦略」が守ると宣言している「第一列島線」の外側に位置しているが、中国との「ほどほどの平和(decent peace)」のために南シナ海の重要性の評価を変えたのであれば、トランプ政権には警告を要するであろう。

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