栄養素としての魚の役割
現代では、様々な技術開発により食の多様化が進んでいる。私たちは魚だけでなく、ダイズなどの植物や家畜をタンパク源として生きている。魚の価格が高いのなら、好みは別としてダイズや肉類でタンパク質を摂取すればいいということになる。
しかし、魚には、ビタミン、カルシウムなどだけでなくDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)があり、魚の脂は不飽和脂肪酸を含んでいる。赤身肉や鶏肉は筋トレや体作りには適しているが、肉を多めに摂取すると飽和脂肪酸も多めになる。
日本人食事摂取基準(25年版)で19歳以上の男女の飽和脂肪酸摂取の目標量は総摂取エネルギーの7%となっているが、23年度の健康・栄養調査結果から算出された飽和脂肪酸の平均摂取量は総摂取エネルギーの8.3%となっている。不飽和脂肪酸の摂取、魚食に気を付けたいところだ。
動脈硬化予防、コレステロール低下、抗アレルギーの効果が期待される不飽和脂肪酸のEPA、DHAは酸化しやすいため、刺身や寿司のような生食が適している。魚食は減少傾向にあるが、未病のために欠かせない。
実は短い魚の育種の歴史
私たち人類は作物や家畜の品種改良(育種)を1万年以上前から行い、多様な品種を生み出し、安定供給の実現を目指してきた。作物に関しては、おいしいまたは栄養価の高い野生種を見つけて、同じ性質をもったものを探し、集め、育てやすくて収穫量が多い株を選んだり(選抜)、良い株をかけあわせたりして(交配)、作物にした(作物化)。
動物については、牧場のような一定の区域で飼育し(家畜化)、今では人工授精がほとんどとなっている家畜もある。結果として、野菜や果物、牛や豚、鶏肉を安定的にスーパーなどの店頭に並べることができている。
ところが、魚は養殖される品種が限られ、いまだ海や川から獲ってくるものが多い。魚の育種の歴史はわずか50年ほど。作物や家畜における育種(品種改良)のようにはコントロールされていないと言えるのではないか。
魚の飼育は大きく分けると、卵や稚魚から飼育する「養殖」と、人工ふ化させた稚魚や稚貝を飼育してから放流する「栽培漁業」がある。
養殖には、網いけすや貝類用の養殖いかだを海に設置する「海面養殖」と、水槽や池で魚やエビを飼育する「内水面養殖(陸上養殖)」がある。

