2026年5月19日(火)

食の「危険」情報の真実

2026年5月19日

 海面養殖は施設設置が不要で、水道光熱費が最小となり、コストが低い。コストの6~7割は餌代である。日本の海面養殖生産量は80万1200万トン(21年)と国内養殖生産の大半を占めている。

 しかし、栽培農業と同じで、台風や津波などの自然災害、赤潮などの有害プランクトンの大発生による養殖魚の大量死、設備の流出や破損のリスクがある。また、海水を使うために寄生虫や病原菌の進入リスクもある。過密な海面養殖による餌の食べ残しや餌の排出は水質汚濁や富栄養化の原因になって環境劣化をもたらす。

 陸上養殖は、養殖環境を完全に管理できるために衛生的に飼育できて、安定した生産、魚の品質管理ができる。海難事故などの漁業従事者の労働環境の安全性を向上させるメリットもある。しかし、初期投資とラニングコストが高いので、自治体補助などがないと参入しにくい。

 一方、栽培漁業は水産資源の回復・増大、資産資源の持続的利用を目指すもの。主に以下のような種類が放流されている。

魚類  : キジハタ、マダイ、ヒラメ、トラフグ

甲殻類 : クルマエビ、ガザミ

貝類  : アワビ類、ホタテガイ、アサリ

その他 : ウニ類、マナマコ

 栽培漁業で多種類の海産物で応用されていることに驚く。だが、人手やコストがかかり、自然環境に左右され、放流魚の生存率が変動するリスクが悩ましい。

 そもそも育てる漁業(養殖)が盛んになったのが60年代、品種改良に力が入れられたのが80年代という、育種の歴史の短さ、知見蓄積の薄さは厳しい現実だ。しかし、全く手つかずというわけではない。染色体を操作した3倍体の魚が作られ、ヤシオマス(栃木県)、びわサーモン(滋賀県)、伊達いわな(宮城園)、奥多摩やまめ(東京都)などが全国各地で実用化している。魚の旬は産卵前の栄養を蓄えた時期だが、3倍体は成熟しないで成長し続け1年中が旬になる。

 その後、遺伝子組換え技術やゲノム編集技術がとり入れられて、研究・開発が進むが、家畜や農作物のようにはいかない。そして、食卓に並ぶ魚の全てを養殖で提供することは難しい。そこには、育てる環境が海や水上という不確定な環境である「絶対的な条件」がある。

魚食を支える技術

 食の安定供給への技術開発として、近年、世界的に注目されているのがゲノム編集だ。タンパク源においても、英Genus(ジーナス)社が開発した豚繁殖・呼吸障害症候群ウイルスに抵抗性を持つブタを開発している。日本においては、肉厚のマダイや成長の早いトラフグおよびヒラメなど、魚への技術開発で世界をリードしていると言える。


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