2026年5月19日(火)

World Energy Watch

2026年5月19日

ナフサは潤沢にあるのだろうか

 図-3が示すように、ナフサの在庫は消費量の2週間程度しかない。ナフサを分解したエチレンなどの在庫、さらに加工された合成樹脂、合成ゴムなどの川中在庫を含むと4カ月分はあると業界団体の石油化学工業協会は発表している。

 高市首相も4月上旬にナフサがなくなると報道された際に、次をXに投稿した。「既に調達済みの輸入ナフサと国内での精製2ヶ月分に加え、ポリエチレン等のナフサから作られる中間段階の化学製品(川中製品)の在庫2ヶ月分(ナフサ精製が仮にゼロであっても需要を満たす供給ができる期間)で、少なくとも国内需要4ヶ月分を確保しています」。

 Xはさらに次のように続いている。「足下では、国内でのナフサ精製の継続(約110万kl/月相当(2024年平均))に加え、中東以外からのナフサ輸入量も倍増すること(約90万kl/月相当)によって、昨年の平均的な国内需要量(約280万kl/月)を満たすにあたっても、前記の川中製品の在庫(ナフサ換算で約560万kl)を使う量も減らすことができ、その在庫期間は半年以上に伸びます」。

 世界最大のナフサ輸出国はロシアだが、制裁対象のロシアからの日本への輸入はないだろう。そうなると米国からの輸入が期待されるが、中東と韓国分を補うほどの量はない。

 原油の輸入量の落ち込みを備蓄の放出で補えば、国内製造分を当面確保することは可能だ。ただ、ナフサの在庫に関する説明はクリアとは言えず、半年分の在庫があるというのは過大に見える。

 4カ月分の在庫にも製造あるいは輸送途上のナフサが含まれているようにも思える。国民を安心させるための発表だろうが、数字は正確だろうか。

 とは言え、在庫がすぐになくなることはなさそうだ。しかし、価格は大きく上昇し物流に影響を与えている可能性がある。

ナフサの価格はどこまで上がる

 ホルムズ危機の影響で、ナフサの価格も急騰している。欧州の価格は2月末の1トン600ドル弱から、900ドル前後まで約50%上昇している。中東のナフサの価格は、イラン戦争前の約2倍の1トン当たり1300ドルに跳ね上がっていると報道されている。

 最新の日本の貿易統計では今年3月のナフサの輸入価格は1kl当たり6万6000円だったが、4月以降の輸入価格は大きく上昇すると予想される。原油価格の上昇を受け国内製造のナフサの価格も上がる。

 ナフサの価格上昇はプラスチックからタイヤ、塩ビ製品、包装材、塗料まで多くの品物の価格を引き上げる。価格上昇が確実に見込まれる中で、発注量、在庫を増やす需要家がいても不思議ではない。これも流通の目詰まりに影響を与えている可能性が高い。

 ナフサの価格が上昇すれば、年間3500万トンを輸出していると推定されている世界一の輸出国ロシアの経済は、また助けられる。プーチン大統領は、ホルムズ海峡の封鎖解除の動きが鈍いトランプ大統領に足を向けて寝ることはできない状況だ。


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