2026年6月13日(土)

山師の手帳~“いちびり”が日本を救う~

2026年6月13日

もし人生が鉱山なら

 帰り際、私は井上さんの手を握った。骨ばった手だった。しかしその手には、昭和を生き抜いた男の歴史が刻まれていた。マッカーサーは言った。

「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」

 だが、私はそうは思わない。老兵は消えない。その人が生きた物語は残る。井上さんが歩いた道。私が歩いている道。それは誰かの心に受け継がれていく。もし人生が鉱山なら、井上さんは自らの鉱脈を掘り尽くした男だった。

 私はまだ掘っている。違いはそれだけなのかもしれない。老人ホームを出ると、夕暮れの風が静かに吹いていた。その風は良寛のように穏やかであり、一休のように自由だった。

 私は空を見上げた。

 そして、もう少しだけ、この世という鉱山を掘り続けてみようと思ったのである。

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