2026年6月10日(水)

World Energy Watch

2026年6月10日

米国の再エネ設備増の理由

 再エネに冷淡なトランプ政権下での米国でも太陽光発電を中心に再エネ設備の導入量は増えている。

 今年全米で導入予定の新規発電設備容量8600万キロワット(kW)のうち半分強は太陽光発電だ。再エネ設備の不安定な発電を補うための蓄電池の導入量も全体の3割近くを占める(図-3)。皮肉なことに、共和党が強固な地盤を持つテキサス州が、全米の太陽光設備の40%、蓄電池の53%を占める計画だ。

 なぜトランプ政権下の米国で再エネが増えるのだろうか。理由は生成AIを支えるデータセンターだ。

 世界のデータセンターの45%の容量を持つ米国ではハイパースケールと呼ばれる大規模データセンターの新設が目白押しだ。必要な電力量も大きい。24年のデータセンターの電力使用量は、1830億kW時。25年の消費量は2000億kW時を上回り、米国の電力消費量の約5%になったと推測されている。

 国際エネルギー機関は、30年に米国のデータセンターの電力需要量は4260億kW時に達すると予測している。発電設備の新設が大きな課題だ。

 データセンターの非常用電源としても利用され工期も短い天然ガス火力発電設備への発注が相次ぎ、ガスタービンは4年待ちだ。

 すぐに作れる発電設備と言えば太陽光発電と蓄電池だ。共和党地盤の州でも、データセンターのため「すぐに発電可能な設備は何でも作る」方針は変わらない。

 しかし、エネルギー危機が再エネ設備の導入予定を増やすかと言えば、そうはならないだろう。問題は、エネルギー価格上昇が引き上げる再エネ設備のコストだ。

再エネ設備の罠

 22年のロシアのウクライナ侵攻によるエネルギー価格の上昇はインフレを引き起こした。その結果、発電量当たりの重要鉱物、資機材の使用量がもっとも多い洋上風力設備のコストは大きく上昇し、欧米だけでなく日本でも事業者の撤退を引き起こした(三菱商事は悪者なのか?洋上風力撤退の決断を数字で検証してみた、ガラガラポンの発想転換が必要な理由 Wedge ONLINE)。

 ホルムズ危機も、多くの資機材の価格を既に上昇させインフレを引き起こしている(終わらないイラン攻撃で値上げの夏に直面する日本…補助金を続けるほど日本のエネルギー価格は上昇する! Wedge ONLINE)。

 太陽光、風力発電設備は、火力、原子力発電設備との比較で、重要鉱物だけでなく多くのセメント、鋼材、アルミなどを使用するので(図-4)、再エネ設備への投資額を上昇させ、結果として発電コストも上がってしまう。インフレ抑制のための金利引き上げも投資額が多い再エネには大きく影響する。

 再エネ設備は、原子力、火力発電設備よりもインフレと金利上昇に弱く、洋上風力事業に見られたように、競争力を急速に失うことがある。インフレの進み方が再エネ設備の競争力を決めることになるので、事業者は慎重な判断を迫られる。

 化石燃料価格が上がり、供給にも問題があるから、再エネで代替と言うほど単純な話ではない。燃料価格の上昇が引き起こすインフレと金利の影響を考えると難しい判断になる。

 では、中東とは無縁の輸出国から供給される石炭を利用すれば、エネルギー危機の影響を和らげられるのだろうか。


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