2026年6月18日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月18日

 しかし、明らかにトランプ大統領は地上戦に消極的で、湾岸アラブ諸国とその石油関連施設への報復リスクを考えると説得力を欠いていた。軍事専門家の観点から見れば、湾岸アラブ産油諸国の脆弱性がイランに「エスカレーション上の優位」を与えていた。

 トランプ大統領は執拗にオバマ大統領と自分を比較し、オバマ政権がイランと結んだイラン核合意(JCPOA)を嘲り、「合衆国が結んだ歴史上最低な取引の一つ」だと呼んで、自分(トランプ)は、このようなどうしようも無い取引をイランとは決してしないと主張している。しかし、現在、トランプが交渉している合意は、オバマが交渉した合意よりも悪いものだ。

 例えば、イランが何時でもホルムズ海峡を封鎖出来るということを認めている。そして、これが、交渉の達人と自称するトランプ大統領の行った成果だ。

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米国にとって「悪い合意」

 米国とイスラエルが開戦劈頭の斬首作戦でイスラム革命体制の崩壊に失敗した以上、地上戦で首都テヘランを陥落させることがほとんど不可能なので、米国とイランの双方の面子が立つという条件が成立しないと戦争終結は困難だが、米中首脳会談後、トランプ大統領が核開発問題で譲歩を示したので、その可能性が生じたと思われた。

 しかし、トランプ大統領の譲歩を「弱さ」と考えたイランが停戦条件を吊り上げ始めたために雲行きが怪しくなっている。ラックマンが批判している停戦条件は、まさに、両国間で合意が成立したと報じられた内容だと思われるが、この停戦合意の覚書の内容は、一方的にイランに有利であり、60日間の停戦以外に米国が得られるものはほとんど無いので、「悪い合意」であることは明らかだ。

 5月29日、トランプはこの合意を受け入れるか会議を招集したが、結局、署名を先送りした。恐らく今回の戦争終結のモメンタムは失速したと考えられる。

 一旦合意に達したと伝えられる覚書内容は、(1)60日間の停戦延長、(2)核の問題は、高濃度ウランの扱いも含めて全部、この60日間で協議、(3)対イラン制裁と凍結資産の段階的解除、とされるが、(4)ホルムズ海峡については、トランプ大統領は完全な解放に合意したと主張し、イラン側は、ホルムズ海峡はイランが管理すると主張するという真逆な内容である。7月4日に迫る米国建国250年祭で「戦争に勝った大統領」という演出をしたいトランにはほとんどメリットが無いので署名が延期されたのは当然だろう。


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