記録上は鎌田の得点。しかし、このゴールが森保監督の交代策から生まれたことは間違いない。小川は「ゾーンを見た時に、あそこしかないと思った。純也君も分かっていて、本当に意思疎通が合った」と振り返った。ベンチスタートだった選手たちが流れを変える。それもまた、今大会の日本代表を象徴する姿だった。
塩貝健人は「航基君とは一緒に出るだろうと予測していた。それがいい形で航基君が決めてくれた。次は僕の番だと思う」と語る。実際、塩貝自身も同点直後に投入され、前線からの守備やプレスで試合を締める役割を担った。「まずは勝ち点を取ることが大事だった。無駄な失点は避けたかった」と振り返ったように、短い出場時間でも役割は明確だった。
ここにも”森保ジャパン”の特徴がある。先発の11人だけではない。途中出場の選手たちも、自分が何を求められているのかを理解している。
理解していた今大会における「勝ち点1」の意味
同点に追い付いた後の戦い方も興味深かった。もちろん勝利は目指していた。しかし、相手は優勝候補のオランダである。ここでバランスを崩して勝ち点1まで失う必要はない。
塩貝も「同点になった後は、まず勝ち点を取ることが大事だった」と話している。大会全体を見据えれば、この判断は極めて合理的だった。今大会は48カ国参加となり、12組に分かれてグループリーグを戦う。各組上位2チームに加え、各組3位のうち成績上位8チームもラウンド32へ進出できるレギュレーションだ。
つまり、勝ち点1の価値は従来大会よりも大きい。優勝候補相手に勝ち点を積み上げたことで、日本は今後のチュニジア戦、スウェーデン戦を有利な立場で戦えるようになった。
もっとも、選手たちは満足していない。菅原は「誰も満足していない。勝ち点3を取りに行っていたゲームだった」と言い切る。「ゲームマネジメント的に3を取りに行くこともできたと思う。だから勝ち点1はポジティブだけど、1よりも3が欲しかった」。この言葉に、現在の日本代表の成長が表れている。
ただし、大事なのはここからいかに勝ち点3を拾っていくかだ。チュニジアに勝利して勝ち点を4に乗せれば、最低でも3位以上でのグループリーグ突破はほぼ確定する。無論、そこからスウェーデン戦も勝利を目指していくことにはなるが、選手の起用法を含めて、計算を立てやすくなることは非常に大きい。
