不安定な政治情勢にも強い
2025年のトウモロコシの収穫量は約4億3200万トン(米国農務省調べ)。過去最高を記録し、90年間で約7倍も増えた。
収量性に優れた種子の品種改良や農法テクノロジーの進歩などが背景にある。しかも農場では土壌に炭素を閉じ込める不耕起栽培や肥料(化石燃料由来)の適正使用などで低炭素化も進む。
エタノールとエネルギー問題に詳しいイリノイ大学シカゴ校のエコノミスト、ステフェン・ミューラー氏は中東情勢のような地政学的な影響に対し、「レジリエンス(resilience)」という言葉を使い強さを強調する。「エタノールの供給力は需要よりも高い。ポテンシャルはまだまだ大きい」と新たな需要にも応じられる状況だ。
海運燃料に新たに巨大な需要
そのポテンシャルの最たるものが海運船舶の燃料への利用だ。世界の海では100トン以上の船舶(貨物船や客船など)が約5万8000隻も航行している。世界貿易の8割以上は海上輸送が占め、これらの船舶が消費する燃料は年間で約2億トン(水換算だと2億キロリットル)にも上る(日本海事センター調べ)。
これに対し、世界で生産されているエタノール(米国の約6230万キロリットルとブラジルの約3300万キロリットルで世界の約8割を占める)は年間約1億1800万キロリットルだ。つまり、世界で生産されるエタノールの2倍近い燃料が船舶に利用されているわけだ。
米国のエタノール事業者がこの巨大な需要を見逃すはずはない。米国のエタノール生産事業者で組織する「再生可能燃料協会」(RFA)のエドワード・ハバード氏(法務最高責任者)は長さ約400メートルのコンテナ船のイラストをスライド上に見せ、米粒のように小さい車やトラック、飛行機のイラストを重ねた。このイラストを見れば、巨大なコンテナ船がいかに大量のエタノール燃料を使うかがひと目で分かる。こうした巨大なコンテナ船やタンカーがエタノール燃料で走れば、エタノール需要が莫大な量になるのは素人でも分かる。
