2026年6月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2026年6月26日

 以上に述べたことには、潜在的あるいは現実の地域の敵との緊張緩和の試みという外交的な側面があり得る。インド・太平洋における中国や北朝鮮、欧州におけるロシア、中東におけるイランがそれである。

 しかし、彼らには軍事的に強い立場からのみアプローチすべきであり、そのためには新たな更に深いパートナーシップを必要とする。単独で、または好ましい軍事バランスを欠いたまま、効果的な抑止もないまま、彼等と折り合いをつけようとすることは無謀、危険である。

 米国をかつてのようには頼りに出来ない世界にあっても、目標は如何なる代償を払ってでも安定を求めるのではなく、国の利益および西側の利益に合致する条件での安定である。これは達成可能であるが、そのためには米国の友好国が新たな現実を認識し、個々にそして集団的にこの挑戦に取り組む必要がある。

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コミットを減らし、能力を浪費

 米国をかつてのようには頼りに出来ない世界にあっては、米国の同盟国は互いに協力して侵略を抑止し対処するために地域的な新たな深いパートナーシップを構築すべきである、とのハースの論旨は理解できる。米国をかつてのようには頼りに出来ない理由は、「自らの能力とコミットメントとの間のギャップを狭めたいという米国の強い動機にある」と筆者は説明している。

 トランプ政権による現存の秩序を破壊しかねない言動を説得性のある形で論理的に説明しようとすれば、そのようになる。しかし、それだけで説明することは出来ないように思われる。そこに「アメリカ第一」の衝動が働いていることは否定し難いと思われる。

 それだけではない。米国は、「自らの能力とコミットメントとの間のギャップを狭める」というが、トランプ政権はコミットメントの削減を一方的に試みている。

 エルブリッジ・コルビー(国防次官)は、北大西洋条約機構(NATO)条約第5条の有事に際する相互支援の義務を厳格に順守するのかどうかを意図的に曖昧にする発言をしている。南シナ海が中国の内水と化すことを阻止することを米国が諦めたかと疑われる兆候も見られる。台湾への武器供与を中国との取引材料と考えているトランプの態度も見逃すことはできない。いずれもコミットメントからの後退と指摘し得る。


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