1期目には何を成し遂げたか?
そこで手始めに、トランプ大統領が1期目の4年間(2017年1月~21年1月)に残した実績を振り返ってみる。
まず、外交面だが、「トランプ大統領一人のみ」で「世界の平和」をもたらした事例は何一つない。
むしろ、逆に、①環太平洋パートナーシップ(TTP)から一方的に離脱し、アジア太平洋地域での混乱を招いた②中国との関係では、知的財産侵害などで非難を繰り返し、関税など強硬な貿易政策で両国間の緊張を高めた③北大西洋条約機構(NATO)や日韓などに大幅な防衛費負担増を要求し、同盟関係を揺さぶった④中東では、イランとの核合意から離脱したほか、周辺諸国の反対を押し切ってエルサレムをイスラエルの首都に認定するなど、緊張要因を増幅させた⑤地球温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」からの一方的離脱を発表したなど、独断専横の政策により、それまで比較的安定していた国際秩序をかえって揺さぶった。
もちろん、4年間を通じ、平和への模索が皆無だったわけではない。
朝鮮半島情勢をめぐっては、18年6月(シンガポール)、19年2月(ベトナム・ハノイ)に北朝鮮の金正恩総書記と直接会談し、朝鮮半島非核化問題などについて意見交換したほか、19年2月には、板門店の南北軍事境界線を越えて北朝鮮側の会議場での首脳会談に臨んだ。
しかし、具体的な成果や合意に至らず、決裂したまま、今日に至っている。しいて国際面での成果を挙げるとすれば、コソボ―セルビア間の和平合意、バーレーン、スーダン、モロッコもまじえたアラブ―イスラエル間の「関係正常化」くらいだ。
世界全体を俯瞰した場合、トランプ氏は大統領就任後、選挙公約として打ち出した「アメリカ・ファースト」主義の徹底により、それまでの幾多の国際協定、対外コミットメント見直しに乗り出し、国際平和を不安定なものにさせたといえよう。
経済面でも、国内のみか、グローバルな規模での繁栄がもたらされた4年間だったと信じる人は少ない。アメリカの国益のみを重視し、多くの国際取り決めや枠組みを犠牲にした結果、高市首相が言及した「世界経済の繁栄」はもたらされるどころか、かえって委縮した。
イランとの戦争で平和も繁栄も損なわれる
では、昨年1月スタートした2期目のトランプ政権はどうか。
今年6月までの外交政策を振り返ると、第二次世界大戦後の国際秩序根本的見直しに着手、南北アメリカを自国の権益下に置く一方、欧州諸国に対しては孤立主義的アプローチをとるなど、「モンロー主義」を模した“ドンロー主義”に彩られてきた。同戦略の下に、今年1月には、前触れなしにベネズエラに軍事侵攻、1夜にしてニコラス・マドゥロ独裁政権を転覆させた。
そして翌2月には、その余勢をかって、イスラエルとともにイランへの大規模攻撃に乗り出したが、イラン側の予想外の抵抗にあい、双方間の交戦は、「停戦合意」が成立した6月後半まで続いた。
また、トランプ大統領は一時、デンマーク領グリーンランドの統治、隣国カナダ併合への意欲を示すなど、NATOとの関係にも亀裂を生じさせた。
その結果、「世界平和」は促進されるどころか、かつてない動揺をきたしたことは、誰の目にも明らかだろう。
