まだ任期半ばとはいえ、トランプ第二次政権下では、「世界の平和」のみか、「繁栄」も大きく損なわれることになった。
その最大要因は、対イラン戦争によるもので、戦闘が長引いた結果、ホルムズ海峡経由の原油輸送が滞ったため、エネルギー・諸物価高騰が世界各国に波及、株価も低迷するなどのマイナス影響が広がった。
平和は一人では達成できない
まさしく“It takes two to dance”(ダンスはペアで踊るもの)という言い回しがある通り、そもそも、世界の平和や繁栄も、1国の指導者の手腕だけで達成できるものではない。どんな形であれ、相手の理解と協力、場合によっては妥協があってこそだ。一国のみの判断と行動で決着するとすれば、それはまさに独裁者だ。
かつて、ベトナム和平でノーベル賞を受賞した故ヘンリー・キッシンジャー博士も、同時受賞の対象となった北ベトナムのレ・ドク・ト政治局員の受賞辞退を受けて自らも賞の返還を申し出たことがあったが、「自分一人の功績によるものではない」と、のちの回想で語っている。
まして、グローバル化の進んだ今日、多くの当事国との協議と妥協抜きには、どんな問題であれ、解決は望めなくなっている。
高市首相は、今月半ば、米・イラン両国が戦闘終結合意にこぎつけたことをもって、「世界平和」へのトランプ大統領の具体的貢献ぶりを評価したいところだろう。実際、首相は15日、フランス東部エビアンで開幕した先進7カ国首脳会議(G7サミット)夕食会で、米イラン戦闘終結合意について、「事態終息に向けた大きな一歩だ」として米側の外交努力に敬意を表したと報じられている。
ただ、そもそも世界に混乱をまき散らした今回の両国間の戦闘は、さしたる大義もなく米側の一方的攻撃で始まったものであり、パキスタンなどの仲介努力でようやく終結にこぎつけたからといって、それを「米側の努力」と評価すること自体、的外れだ。
G7の他の首脳からは、トランプ氏に対する表立った賛辞や感謝の発言がなかったことは、むしろ当然といえよう。
しかも、今回の戦闘終結をうたった米・イラン双方による「覚書」については、いくつかの難題を棚上げしたままの”見せかけの取り決め“との見方が少なくない。
その一つ、国際的関心事となってきたイランの核問題に関して、トランプ氏は、今回の合意に際し、イランの保有する高濃縮ウランをすべて希釈し、国外撤去すると主張した。しかし結果的に、イラン側は、「合意」署名後60日間の協議で議論すると主張するなど、事実上、丸ごと先送りされた格好となっている。
また、ホルムズ海峡の今後についても、「即時開放」と述べたトランプ氏に対し、イラン側は隣国オマーンとの共同管理の意向を示しており、世界各国の石油タンカーが以前のように自由航行できるかどうかも不明だ。
特に、イランの核開発問題については、両国は昨年末まで、国連調停の下で安全管理促進のための協議を続けてきた。ところが、去る2月の米国の一方的対イラン攻撃でイラン側が態度を硬化させ、協議はとん挫したままとなっている。
