前々から書き続けてきたように林地崩壊の一番の要因は、林道や作業道による林地撹乱なのだ。一般の視聴者にはどのように映ったかは分からないが、説明だけ聞けばなるほどだが、映像では山荒しじゃないかと疑問を覚える人も多かったに違いない。
そう、森林の保全が目的だと主張する割には、森林保全にとれだけ効果があるのかも定かではない手入れに、高い経費を投入して、逆に山荒しを助長しているかのようだ。これが今の林業の実態であり、それを主導しているのが林野行政なのである。
はたまたそれを鵜呑みにして番組を制作して垂れ流すマスコミやジャーナリストの何と多いことか。昔、青森営林局で白神山地の自然保護を担当していた時、NHKをはじめマスコミにさんざんたたかれた記憶があるが、当時の記者やディレクターたちは、それなりに勉強していたし、掘り下げた現場取材もしていたので手強かった。
まあ、林業みたいに世間の関心の薄い分野だから仕方がないのだろうか。薄っぺらな理屈で素人受けのいいストーリーを流すのは犯罪に近い。行政の理屈であるならなおさらのこと、ちゃんと裏を取るぐらいの用心深さが必要ではなかろうか。こんな情緒的なストーリーが繰り返されるうちに、とうとう定説化されてしまった。
令和7年度の森林・林業白書の特集は、この番組のストーリーの元ネタだと言ってもいいぐらいそっくりのコンセプトである。それなら、その白書のデータを存分に生かして現代森林行政批判を試みようではないか。
説得力のない森林・林業白書
毎年度の森林・林業の動向を、森林の整備・保全、林業と山村、木材需給・利用と木材産業、国有林野の管理経営などの項目別に紹介しているほか、年度ごとに特集を組んでいる。今回令和7年度の特集は、「森林資源の循環利用の確立に向けて~木材利用と再造林をつなぐ~」である。ちなみに6年度は「生物多様性を高める林業経営と木材利用」、5年度は「花粉と森林」で、いずれも突っ込みどころのあるお題であった。
どのようなお題を掲げて説明してみても、どうも説得力がない。その原因は、樹木、森林、生物、自然に対する理解不足にある。
細かいことではない。森林について細大漏らさず理解することなど到底できないことだが、さまざまな事象が自然の摂理に沿ったものであるかどうか、おおまかにでもとらえることが大事なのである。
行政の困った事情が根本にある。過去の行政対応を否定して一挙に変えることができないのだ。将来に向けた対策を提言しようにも、過去とのつじつまが合わなくなって、年年歳歳それを繰り返しているうちに、行政と現実とのギャップが取り返しのつかないくらい広がってしまった。そうなるとますます行政が現実に近づくことは困難になって、これまでの路線の正しさを強弁するしかないのである。
切り口を変えれば、現場の経験不足であろう。森林に働きかける行為が自然と対立してしまっていると、どんなに力んでもいい結果は得られない。机上でどんないい絵が描けても、役所の中での評価がいいだけであって、現場適応性がないのでは困るのだ。
今のような自然に抗った森林・林業政策では、無駄な労力、お金、時間を費やすのみで、将来に何も残さない。もっとも日本の自然は復元力が強いから、どんなに傷つけても時がたてば修復されてしまう。しかし、それに甘えるのではなく、もっと効率の良い、環境保全に寄与した、しかも儲かる林業を追求できると思うだけに残念で仕方がない。
