この育林経費が一応造林原価になるのだが、それを回収するのは植栽木が成長して伐採した時になる。したがって本来の造林原価は、図2の育林経費に金利(例えば、日本政策金融公庫林業基盤整備資金の利率は3.1%)を加えたものになる。
そこで、図3を見てもらいたい。
⼭元⽴⽊価格に対して造林初期費⽤が⾼くなっている。50年⽣のスギ⼈⼯林の平均的な林分条件で主伐した場合で試算すると、丸太の販売額が513万円/ha、うち森林所有者にとっての収⼊である⼭元⽴⽊価格が181万円/haであり、この両者の差は伐出・運材等のコストになっている。
⼀⽅で、造林初期費⽤は307万 円/haであるから、⼭元⽴⽊価格と比較して126万円の赤字となっている。ここでは造林初期費用のみを比較対象としているが、実際には除伐や間伐の経費も加わるわけだし、補修が繰り返される獣害防護柵の維持管理費も上乗せされるべきである。
さらに金利を加えれば、林業が営利を目的とした産業としては、まったく成り立っていないことが証明される。このような不合理が平気でここ何十年も繰り返されていることも、不自然と言わざるを得ない。
実際には、育林経費に対して国+県+市町村で約9割という圧倒的な補助金が交付されているので、図3で見れば、森林所有者に1ヘクタール当たり150万円程度は残る勘定であるが、とても再造林に充てる費用には届かない。
採算とれるコストカットは不可能
結局、50年生程度の森林の皆伐は、過去の造林の損失を確定し、せっかく成林して高まっていた公益的機能を滅失させ、さらなる再造林による将来の損失を予定する、三重苦の扉を押し開くだけのものだ。
厳密に損益計算をすれば、造林ほど馬鹿げた事業はないことになる。投資した費用、それも9割方が補助金=税金なのだが、いったい誰が得をしているのだろうか。
国や県、市町村の補助も、その森林が伐採されずに維持されて国土保全などの公益的機能を発揮するならともかく、営利事業である林業生産の赤字補填に充てられるのなら、税金の無駄遣いではなかろうか。
最終的な木材消費者である国民が、安く木材を購入できるメリットがあるではないかと言えるが、それなら安い外国産材の輸入でまったく支障がない。結局、造林補助金は国産材価格を外国産材の価格と拮抗させるためのものでしかない。
どのように技術開発しても、図2の育林経費424万円を山元立木価格の180万円以下まで引き下げることなど不可能である。
この大赤字の構図を書き換えるには、端的に言って木材価格に高くなってもらうしかないのである。(次回へつづく)

