2026年7月27日(月)

教養としての中東情勢

2026年7月27日

 フーシ派の「海上封鎖」はサウジだけではなく世界経済にとっても痛い。バベルマンデブ海峡はサウジにとっては封鎖状態にあるホルムズ海峡に代わる原油輸送の重要ルート。日量360万バレルがここを通って主にアジア向けに運ばれる。同派が封鎖を宣言した後、サウジの石油タンカー2隻が攻撃を受けた。

(Rainer Lesniewski/gettyimages) 写真を拡大

 トランプ大統領は「対処する」としてフーシ派が実力行使に出れば、攻撃する意向を示し、戦線拡大の危険性が高まった。フーシ派はイラン支援の「抵抗の枢軸」の一角で、封鎖宣言の背景にはイランの意向が働いているのは間違いないところ。イスラエルは今回の事態を自国の安全保障上の好機と考えており、混乱に乗じて攻撃に乗り出す可能性もある。

 最近明らかになったところでは、イランの攻撃にさらされているクウエートとバーレーンの2カ国がイランへの報復攻撃を行った。これが事実となれば、これまで報復を差し控えてきた2カ国も参戦したことになり、ペルシャ湾全域の交戦激化に発展しかねない。フーシ派とサウジの交戦もあり、戦火が「中東大戦争」に拡大する恐れも現実味を帯びてきた。

ムハンマド皇太子を懐柔

 こうした中で、米国とサウジが「原子力協力協定」に署名した。サウジの実力者ムハンマド皇太子がかねてより米国に求めてきた原発建設支援を具体化した形だ。

 眼目はサウジ国内でウラン濃縮に道を開く項目が盛り込まれている点だろう。UAEと先に結んだ協定では、ウラン濃縮は認められなかった。

 サウジとの協定では米企業がウラン濃縮施設を建設する見通し。原発建設には10年かかるという。サウジ国内での濃縮を認めた今回の協定はイラン戦争を不安視するムハンマド皇太子を懐柔するためだ。皇太子は当初こそ、イラン攻撃を積極的に推したものの、イランから反撃されると、戦争反対に転じた。

 しかもトランプ大統領が5月に突然打ち出したホルムズ海峡からの民間船護送計画「プロジェクト・フリーダム」に対し、事前に相談を受けなかった皇太子が激怒、へそを曲げてしまった。大統領はやむなく1日で計画を撤回したが、サウジとの関係は冷却化した。

 このため大統領は皇太子の怒りを鎮めようと原子力支援に踏み切った、というのが真相のようだ。しかし、UAEには国内でのウラン濃縮を認めずにサウジだけに許したことで、今度はUAEからの反発を買っている。しかも将来的に核拡散のドミノが起こるリスクもある。大統領は協定調印の条件としてサウジにイスラエルと国交を樹立するよう要求しており、締結されるかは微妙。


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