2026年7月27日(月)

教養としての中東情勢

2026年7月27日

船舶攻撃のたびに橋、発電所を破壊

 しかし、イランの報復で米兵の被害も拡大しており、トランプ大統領の連日の脅しがイランには効いていない。国防総省の発表によると、開戦からこれまでの米兵の死者は18人、負傷者は447人。過去2週間で3人が死亡、約百人が負傷しており、このところのイランの反撃が猛烈なものであることが分かる。

 ヨルダンやイラクなど比較的遠距離の地域での被害が多い。大統領は「イランが米兵1人を殺害すれば何倍も代償を払わせる」「船舶攻撃のたびに橋か発電所を破壊する」などと激しくイラン非難。実際7月11日以降13日連続で攻撃。さらに大規模攻撃を計画しているとし「過去最大の攻撃だ。決断は近い」と恫喝した。

 トランプ大統領のイラン戦争へののめり込みは過去の米政権の悪夢を思い起こさせる。アフガンでは侵攻した米軍がイスラム組織タリバン政権を打倒したが、「20年」という最長の戦争になった。結局タリバン掃討はできず、米兵の戦死者は7000人を超えた。イラク戦争でも約9年間で4000人を超す戦死者を出し、過激派組織イスラム国(IS)の台頭を許した。

耐久戦も限界に

 だが、耐久戦の決意があらわなイランだが、国民を苦しめる経済的な困窮は限界に近づいているのも事実だ。同紙によると、最近、学者や政治家、労組、聖職者ら著名なイラン人268人が「戦争反対」の嘆願書に署名したという。

 イスラム政権の厳しい弾圧政策の中で、戦争に異議を唱えるのは危険な行為だ。米国の海上封鎖で輸出入ができず、切羽詰まった末の行動だったろう。

 しかし、最高指導者モジタバ師は最近の声明で「忘れられない教訓を米国に与える」と強気の姿勢を強調。ガリバフ国会議長も「われわれが石油を売れないなら誰も売ることはできない」と徹底抗戦の構えだ。仲介役のカタールが「10日間の停戦」提案を打診しているが、米イランとも応じる兆候はない。

 もう1つ注目されるのはトランプ大統領が最近「ピックアックス山への攻撃」に再三言及していることだ。ピックアックス山は核関連施設がある中部ナタンズ近郊にあり、イランが建設中の新たな核施設といわれる。主要な施設は地下100メートル付近にあり、昨年以降、トンネル補強工事が確認されている。

 イスラエルの情報機関によると、イランが昨年6月、米イスラエルに核施設3カ所を攻撃された後、数千基の遠心分離機をここに移設したという。米国が誇る地中貫通弾でも破壊は難しい。イスラエルのネタニヤフ首相は来週訪米し、トランプ大統領と会談する予定だが、ピックアックス山の攻撃を含め、イラン戦争の泥沼の第二幕が上がろうとしている。

Facebookでフォロー Xでフォロー メルマガに登録
▲「Wedge ONLINE」の新着記事などをお届けしています。

新着記事

»もっと見る