2026年8月20日(木)

食の「危険」情報の真実

2026年8月20日

世界約30カ国で栽培

 GM作物は、他の生物の有用な遺伝子を組み込んで新しい形質を持たせた作物のことだ。主な形質としては「特定の除草剤を撒いても枯れない除草剤耐性」、「害虫に強い害虫抵抗性」、「乾燥や干ばつに強い乾燥耐性」などがある。

 世界のGM作物を調査している国際アグリバイオ事業団(非営利・ISAAA)によると、これらの形質をもったGM作物は現在、米国、カナダ、スペイン、中国、フィリピンなど約30カ国で栽培されている。その栽培面積は日本の国土の5倍を超える約2億ヘクタール。栽培面積の上位5カ国は米国、ブラジル、アルゼンチン、インド、カナダの順だ。GM作物で広く普及しているのは主に大豆、トウモロコシ、ナタネ、綿、ナスである。

 GM作物が世界中で普及してきたのは、栽培するメリットが大きいからだ。外資系企業で組織したバイテク情報普及会(東京)や国際アグリバイオ事業団によると、これまでの研究で「殺虫剤など農薬の使用量の削減」「収量の増加」「土壌流失の抑制」「不耕起栽培による二酸化炭素排出量の削減」「ウイルス病で絶滅寸前に追い込まれたハワイのパパイヤ産業の復活」「発展途上国の農家の生活向上」など数多くのメリットが報告されている。

 国連は2015年、「化石燃料の削減」や「貧困の撲滅」など持続可能な経済目標(SDGs)を掲げたが、GM作物はこれらSDGsを達成する手段として有用なことを示した。

なぜ、日本で進まないのか

 不思議なのは、こうしたメリットが日本の消費者にはほとんど伝わっていないことだ。これまで大手メディアが報じてきたGM作物のニュースはネガティブな記事が多く、GM作物の実像を的確に報じた記事はほとんどなかったと言ってもよい。

 日本では国や自治体の研究機関が「病気に強い遺伝子組換え稲」などの研究開発を進めてきたが、スギ花粉症を抑える「組換えスギ花粉米」を除き、ことごとく葬り去られてきた。日本のGM作物は苦難の歴史だったといってよい。

 なぜ、日本はこうも世界から取り残されたのか。それを検証した書籍が『バイテク農業の未来・遺伝子組換え作物とゲノム編集食品』(ウエッジ)である。筆者のほか、小泉望・大阪公立大学教授、田部井豊・東洋大学元教授、唐木英明・東京大学名誉教授ら10人がそれぞれの視点で多面的に考察した異色の本だ。

 執筆者でユニークなのは鳥取市の生産者、徳本修一氏。世界中のGM作物の現場を見てきた徳本氏は「GMトウモロコシやGM稲を用いて、日本でも不耕起栽培を始めたい」と日本のパイオニアを目指す意欲を見せている。


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