2026年8月28日(金)

プーチンのロシア

2026年8月28日

 クレパチ氏によれば、マクロ経済指標は最高指導部の意思決定にそれほど影響しない。景気後退を示す推計など「批判的な数字」は上に報告されない場合があり、世界経済やウクライナより成長率が低いという比較も報告されない。一方で、政権が敏感に反応するのは世論調査であり、統一ロシアや大統領の支持率低下を示す情報の方が、GDPの数字よりはるかに重視される。

 このように、講演本体は純粋な経済分析・政策論だったものの、興が乗ってしまったのか、質疑応答でクレパチ氏はかなり際どい発言を発した形となったわけである。

ロシア経済は“漁船”ではなく“タンカー”

 ロシア経済の危機というと、小型漁船が大波をかぶり、今にも転覆するような姿を思い浮かべる人が多いかもしれない。しかし、クレパチ氏をはじめロシア経済に通じた専門家たちが描いている危機像は別のものだ。筆者なりに表現すれば、それは大型タンカーのイメージではないだろうか。

 大型タンカーは、少々の嵐では沈まない。ロシアには豊富な資源があり、大規模な国内市場があり、国家には経済を動員し、痛みを先送りする力も残されている。だから、明日にも経済が「崩壊」するという話ではない。

 問題は、そのタンカーが嵐に耐えながらも、制裁、技術的立ち遅れ、投資不足、軍事支出への傾斜といった危険な海域へ、さらに深く入り込んでいることだ。船体が巨大であるだけに慣性で動き、急停止や小回りが利かず、放っておけばどんどん危うい方向に進んでしまう。嵐や大波を乗り越えていることと、航路が正しいかどうかは、まったく別である。

 クレパチ氏が鳴らした警鐘も、「ロシア経済は間もなく沈没する」というものではない。むしろ、このまま進めば、いつかとうとう座礁し、その時にはもはや自力で安全な海へ戻れなくなる。そんな種類の警告として読むべきなのだろう。筆者も、その認識を全面的に共有する。

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