サウジの実質的な支配者であるムハンマド皇太子はこうした危機に対処するため8月、米国と「戦略的パートナーシップ」を結び、トルコ、パキスタンとの間で「メッカ共同防衛協定」(3国同盟)に調印した。しかし2度にわたって援助を要請したトランプ大統領からはすげなく断られてしまった。
「3国同盟」はイスラム圏唯一の核保有国であるパキスタン、北大西洋条約機構(NATO)で米国に次ぐ地上戦力を持つトルコとの協約だ。「1カ国に対する攻撃は3カ国への攻撃とみなす」というNATOの規定と同様の条項を持つことが特徴。いわば集団防衛態勢の構築だった。
だが、実際にはこれも不発だった。トルコは協定の批准には国会の承認が必要で、まだ未承認だ。サウジから財政支援を受けるパキスタンもいざとなるとすぐには援助には動けなかった。
けんか別れのUAEが頼みの綱
誇り高いムハンマド皇太子にとってイスラムの聖地の守護者を自認するサウジは「安全で偉大な王国でなければならない」。「ビジョン2030」という経済改革を目指す皇太子は国際会議を相次いで開催、国際社会からの投資を呼び込む計画だった。
しかし、サウジの国際映画際は中止になり、このままでは「国際エネルギーフォーラム閣僚会合」や「未来投資サミット」にも悪影響が出る。すでに赤沢亮正経済産業相はエネルギーフォーラム出席を見合わせた。
逆にフーシ派にとってはサウジの弱みを突く作戦。同派のスポークスマンはサウジの空港を利用するのは「安全ではない」との警告を再三出した。
米国には援助を断られ、「3国同盟」も機能しない中、ムハマド皇太子が頼ったのは喧嘩別れした隣国のアラブ首長国連邦(UAE)だった。UAEのイエメンへの影響力を利用しようというのだ。
皇太子は9月末、UAEのマンスール・ビン・ザイド副大統領とリヤドで会談、関係修復を図った。その後、UAEは多数の専門家をサウジに派遣した。近く皇太子とUAEのムハンマド大統領が会談するかが焦点だ。
サウジ、UAEともペルシャ湾の石油大国だが、ここ数年は関係が悪化。ムハンマド皇太子とUAEのムハンマド大統領の強烈な個性のぶつかり合いの結果だ。
皇太子は国際舞台へのデビューの際、ムハンマド大統領の指南を受けた。だが、その後皇太子が力を持つようになると、対立が深まった。
