2026年10月16日(金)

ビジネスと法律と経済成長と

2026年10月16日

 カリフォルニア州では、氏名や声などに商業的価値がある故人について、一定の要件のもとで死後70年間の保護が認められている。テネシー州のエルヴィス法も、パブリシティ権が死後も原則10年間存続すること、つまり、相続の対象となることを規定している。

 このように、米国の複数の州では、声を含むパブリシティ権を、死後も利用・承継し得る財産権として制度化している。保護範囲や例外には違いがあるものの、権利の存続期間や承継の仕組みを明文化することは、ライセンス取引の予測可能性を高める上でも意味がある。世界のエンターテインメント産業の中心地たる米国ならではといえるだろう。

日本が向かうべき方向

 冒頭で述べたとおり、日本では今、コンテンツ産業の輸出力強化に向けた各種の政策が動いている。その成果を持続的な収益につなげるには、作品そのものの保護だけでなく、作品の魅力を支える実演家の権利についても、取引や権利行使を支える制度を整えることが重要だろう。

 日本のパブリシティ権は、判例によって形成されてきた権利である。声が保護対象となり得ることは明確になってきたが、個別の利用が侵害に当たるかという判断に加え、譲渡、相続、ライセンス先による権利行使など、制度上の課題が残っている。

 もちろん、政府も手をこまねいているわけではない。経済産業省の産業構造審議会・知的財産分科会に設けられた不正競争防止小委員会では、生成AIによる肖像や声の無断利用について関係者からヒアリングを行っており、制度の在り方をめぐる検討が進んでいる。

 パブリシティ権保護の制度設計はコンテンツ大国の米国が一歩先んじているようにも見える。しかし、生成AIの登場により、実演家の権利が根底から脅かされようとしている事情はどの国も同じだろう。

 米国や中国は国策としてAI開発競争を繰り広げており、大幅なAI規制論という方向には舵を切りにくいかもしれない。一方、日本はコンテンツ輸出の拡大を国家目標として掲げているのであるから、実演家の権利の保護に向けた制度設計でも、世界をリードする存在になれないものだろうか。

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